フロリダレポート from Florida

フロリダレポート

ゼルウッド・カントリー・キッチン・トラックストップ・ダイナー1 ゼルウッド・カントリー・キッチン・トラックストップ・ダイナー2
ゼルウッド・カントリー・キッチン・トラックストップ・ダイナー (Zellwood Country Kitchen Truck Stop Diner)
2651 South Orange Blossom Trail Zellwood, FL 32798
T: +1 407 889 7002

 古いアメリカ映画(クリント・イーストウッドかジャック・ニコルソンが主演の作品)に、ハイウェイ沿いにある田舎のダイナーが出てくる。気取りがなく、ファストフードを出さず、全国チェーンの制服をまとったティーンのウェイトレスが、お客と見ればだれかれかまわずお定まりのつくり笑いを浮かべるといった光景もない、そんな店だ。
 わたしが住んでいるフロリダのダイナーでは、イーストウッドやニコルソンには会えなくても、地元のカウボーイ(そう、フロリダには牧場があるのだ)、建設作業員、農夫、トラック運転手や地元の常連客に遭遇するだろう。しっかり目に焼きつけてほしい。こうした空間は絶滅寸前なのだから。「ベンティ・モカ・フラペチーノ」だの「ビッグマックね」だのと注文しているあいだにも姿を消しているのだ。

 オーランドから車で北へ45分、〈ゼルウッド・カントリー・ダイナー〉にたどりつく。カウンターに向かう前に、オーナーのポール・ムーンと世間話をする。景気はどうかと尋ね、ガソリン価格の高騰やらなんやらの話をふる。ポールはうなずいて、去年から商売上がったりだ、いまはどこも厳しいからね、といった答えを返す。ポールは穏やかな口調でしゃべる気のいい人で、この店に心血を注いでいる。わたしは、なんとかふんばってと励ます。ここは近隣のなかでも特別な場所なのだ。
 カウンターでちょうど食事を始めたばかりのデイヴ・クリックスと相席する。デイヴはトラック運転手。43年間、巨大なトレーラーでアメリカ中を走ってきた。この店には機会があれば必ず立ち寄る。デイヴはアメリカのいたるところでダイナーやカフェがつぶれていくのを目の当たりにしてきた。彼によれば、ここは好みに合わせて料理してくれるし、いつも味は抜群だし、いまではなかなかお目にかかれない“夫婦で切り盛りする店”だそうだ。そう言いながら、ウェイトレスのクリスと軽くじゃれ合ったりしている。
「すばらしいハンバーガーだったよ、シェリー! さすがにおれが仕込んだだけあるな」。ある客が、帰り際に笑顔でジョークを飛ばした。ウェイトレスたち(ニコル、スー、クリス)と話してみると、2年前はすごく忙しかったけれど、どんどんひまになってきたと口を揃える。3人ともここで働くのが心底好きなのだ。このダイナーで働くだれもが、すばらしい仕事に携わっているという誇りを抱いているようだ。
 わたしが注文したパティ・メルト(チーズとグリルド・オニオンを入れたハンバーガーで、バンズに具を挟んでからさらに焼いたもの)は、頼んだとおりにつくってある。ミディアム・レア。思わず笑顔になる。こうした本物のアメリカのダイナーがいまも健在なのはありがたい。この手の店では、カウンターの向こうの厨房で働くコックと話ができる。そしてもちろん、でき上がった料理は壁をくり抜いた“窓口”からウェイトレスに渡される。古い映画で観た光景そのままに。(ジャッキー・リード:フロリダ特派員)