
4月から倉敷市内の喫茶店ハンティングを始めた。これまで行った喫茶店の数は約40軒。そのほとんどが、息をひそめるように静かに、ひっそりと営業していた。特集の前半で紹介した9軒の喫茶店も例外じゃない。時代から取り残されたような雰囲気をたっぷりとまとっていた。しかし、日本全国に喫茶店が乱立した60年代から70年代にかけて、これらの喫茶店は間違いなく時代の先端にあった。その面影は店の外観や内装に見てとれる。そこにはファッションとデザインがある。
東京には、こうした時代のデザインを店の個性として打ち出している喫茶店が少なくない。いわゆる「レトロな喫茶店」というやつだ。たしかに喫茶店がいまの時代に生き残るひとつの道筋かもしれない(やり過ぎると鼻について仕方ないのだが)。一方、倉敷はというと、現在残っている喫茶店にそのような意識は皆無だと思う。70年代のテイストが内装にそのまま残っていても、それは店主が気に入って大切に長く扱ってきた結果だ。あるいは、改装したくても金銭的余裕がなかったか……。
そんな倉敷の喫茶店の意識をよく表しているのが店の装飾品である。とりあえず、飾るのだ。観葉植物は一番人気で、ジャングルのようになりかけている店は一軒や二軒じゃない。店主の趣味なのか常連からもらったものなのか、ドライフラワーやパッチワーク、人形、ぬいぐるみといった類のファンシーなものも平気で飾る。70年代テイストがストイックに残っていたとしたら、はっきり言って台無しである。しかし、そんな無造作なファンシーさや、それらがもたらすアンバランスさが、実は地方都市の喫茶店らしさ。ぼくは今ではそれを愛しいと感じる。
今回足を運んだ40軒の喫茶店は、10年後には半数になっているだろう。その10年後にはさらに半数になっているかもしれない。そのとき、倉敷の町の光景はどう変わっているのだろう。