京都で喫茶店が愛される理由

喫茶ソワレ
喫茶ソワレ
喫茶ソワレ Kissa Soirée
京都市下京区西木屋町通四条上ル
TEL075-221-0351

 京都人はコーヒー飲みだ。紅茶党は少数派。調査なんてしてないけれど、日々たくさんの「つわもの京都人」に会ってお話を聞くのを生業としている私がそう感じるのだから、間違いない。思いきって「京都人はコーヒーを愛している(日本茶と同じくらいに)」と言い直してもいいかもしれない。そしてその誰もが、自分にとっての愛すべき喫茶店をちゃんと持っている。
 たとえば、「京都の朝はイノダから」というとびきり気のきいたキャッチコピーでもよく知られる『イノダコーヒ』。昭和7年創業で洋食もおいしい『スマート珈琲店』。ネルドリップにこだわる本店(父)派と自家焙煎にこだわる地下店(息子)派の好みがきっぱりと分かれる『六曜社』。アカデミックさで異彩を放つ、京大北門前の『進々堂』……。これらのクラシックな名喫茶店だけでも、KJvol.7を丸ごと乗っ取れるほどのネタがある。
 だからもちろん「マキちゃんがこれぞ京都の喫茶店と思う写真を1枚、原稿を800字」というKJ編集長の指令には相当悩まされた。何をもって「これぞ」とすべきなのか。古さ? 美味しさ? それとも知名度? 考えあぐねてコーヒーを何杯も飲んでいるうち、はじき出された答えが、青い喫茶店『ソワレ』なのだった。上品な青い灯にやさしく守られた、音楽のない静かな空間。昭和23年に始まったその歴史を紐解かずとも、席に着くだけで感じる初代の豊かな人脈とアートセンス、そして父のスタイルを変えることなく今に繋げる当主の穏やかな情熱と誇り。じゅうぶんにハイカラでありながら、京の伝統的な老舗に通じる高い精神性、そして時代に左右されない普遍的な心地よさ。「これぞ」京都の喫茶店。
 ウエイトレスさんに撮影を終えたと告げると、店主のいつもの言葉が耳に届く。「一杯、熱いコーヒーを飲んでいきなさい」。青に包まれて飲むコーヒーは知的な香り、窓際で食べるゼリーポンチは大人の乙女の味、だ。(高橋マキ:京都特派員)