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蟲文庫店主 田中 美穂

虫日記

「父の買い置き」

父の買い置き
蕗の佃煮も父の好物でした
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買い物好きの父が死んで3ヶ月あまり、冷蔵庫や乾物置き場からは、日に日に 在りし日の父がスーパーの安売りの日などに買いだめしていた食品が減っていき ました。この前はザーサイの瓶詰め、その前は青じそドレッシング、その前は切り干し大根とお麩。私も母も、安売りの日やポイント5倍押しなどの人の多い日はさけて出掛けるタチなので、当然、いるものをいるときにひとつずつ買います。

家に買い置きがあれば、いくら安かろうとも、さらに買ってきて置いておくようなことはしません。なので、その父の買い置きは、どんどん減って行っていました。たまに冷蔵庫を覗いては、「あと、あれとあれ」と、その父の買い置きの残りを確認していましたが、大事に取っておくようなものでもないので、意識するとなく意識しながら口にはこんでいました。

そしてある日とうとう、「あと、これで最後だな」と密かに思っていた、小分けにして冷凍されたちりめんじゃこが食卓に上りました。春先だったので菜の花とちりめんじゃこの混ぜご飯です。これは美味しいのです。お茶わんによそい、ひとりなんとはなし、しんみりとしながら食事を済ませました。

それから数日後、台所の収納棚を片づけていた母が「ちょっと、まだあった、これ」と、指さした場所をみると、なんとジャワカレーの辛口が7つ。我が家は、たいしてカレーを好まない家庭なのですが、たぶん激安かなんかだったのでしょう。父はそういう買い物の仕方をしていました。「この前のちりめんじゃこで最後だと思ってたんだけどねえ」と、つぶやく母の顔は、すこし嬉しそうでした。なんだやっぱり同じこと考えていたのか、と思いながら、「う〜ん、カレー食べないからねえ.....こまったね」と、やっぱりすこしうれしい顔の私。