Krash Cinema Blog

ライター。元・日本美女選別家協会会員。
1963年倉敷(水島)生まれ。
コチラでも映画の話を書いたりしてます。

タランティーノ映画でなぜか伝七捕物帳を思い出したわけ

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tarantino_02.jpg 昔、『伝七捕物帳』という時代劇があった。高田浩吉の主演で50年代に映画、60年代にテレビの人気シリーズだったらしいが、私が知っているのは70年代に中村梅之助が主演したテレビドラマシリーズだ。その中で忘れられないエピソードがある。佐野浅夫(三代目『水戸黄門』でおなじみ)扮する贋作彫り師の話だった。名工の名を騙って贋作の仏像を彫って売りさばく佐野浅夫。その悪事が伝七親分に感づかれるのだが、いよいよ捕まりそうになっても佐野浅夫はヤバい仏像彫りをやめない。彫っているうちに仏の心に魅入られてしまい、どうしてもその仏像を完成させるまでやめられなかったのだ。涙ながらにそう語り、潔くお縄を頂戴しようとする佐野浅夫に、伝七親分は「あんたは本物の彫り師になったんだよ」と諭すのだった……という人情話である。
 クエンティン・タランティーノの新作『デス・プルーフ in グラインドハウス』を見て、私はなぜか『伝七捕物帳』のその話を思い出していた。いや、この映画は日本の時代劇とはまったく関係ない。タランティーノが70年代B級アメリカ映画へのオマージュで撮った作品だ。
 正直、あまり気乗りはしなかった。タランティーノと同じ1963年生まれの私(ちなみに、本誌編集長も同い年)としては、彼の趣味は分かりすぎるほど分かる。しかし、パロディやオマージュというのは虚しいものだ。酒場で同年代の映画好き野郎と行き会って、「あれ見たか?」「これ知ってるか?」のオタク自慢大会をやらかしてしまった後というのは、たまらなく虚しい。タランティーノの「これはあの映画からの引用だぜ」「こういうの好きだろ?」という目くばせばかりの映画を見せられたら嫌だなあと思ったのだ。
「最近の映画はCGばかりでつまらねえ。70年代のカーチェイス映画は良かったよなあ。昔はスタントマンが命がけで本物のクルマをぶっ飛ばしてた。ああいう映画が見たいよなあ」……というタランティーノの企画コンセプトに共感はする。ああクエンティン、お前さんの言うとおりだぜ。俺も『バニシング・ ポイント』や『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』や『悪魔の追跡』が大好きだぜ。
 企画の狙いに共感したからといって、結果として仕上がった作品に感動できるかどうかは分からない。それは別問題だ。しかし、『デス・プルーフ in グラインドハウス』は見事に感動を与えてくれたのである。この映画のわざと狙った安っぽさやデタラメさとか、タランティーノの趣味の部分についてはどうでもいい。とにかくタランティーノはクライマックスのカーチェイスシーンを本気で撮っている。70年代カースタントのスタイルをただなぞるだけでなく、元ネタを超える最高にイカレたカーアクションを、マジで必死に撮っている。その心意気が生んだ素晴らしい結果に、私はモーレツに感動したのだ。つまり、タランティーノは仏に魂をこめたのである。本物の感動にウンチクは要らない。