アジアンビ―ハイブを設立してこの5月で丸5年になる。これまで4回の決算を経験し、いまだ一度も黒字になったことがない。もともと経営者としての自覚が完全に欠落しているので、ここまで赤字が続いていても、悔しいとか恥ずかしいとか悲しいとか、そんなネガティブな思いが一切ない。だいたい、決算書の見方がわからないので、どの程度の赤字なのかがまったく把握できていない。
「今年はもしかしたら黒字になる可能性があります」
税理士の島津さんからそんなメールを受け取ったのは二週間ほど前。アジアンビ―ハイブの決算は2月。申告書類の提出期限は2カ月後の4月末なので、この時期にそんなことがわかってくるのである。
黒字という言葉を聞いたぼくはというと、なんとなく嬉しくなって、いきおいヒトミちゃんに声をかけた。
「ヒトミちゃん、うちの会社、黒字になるかもしれないんだって」
「ええっ! ホントですか!」
明らかにぼくよりも嬉しそうだった。
「我が社始まって以来の黒字だ」
「お祝いしなきゃいけないですね!」
会社が黒字になるというのは、そこまでのことなのか? しかし、可能性があると言われているだけで、まだ黒字と決まったわけじゃない。
本日、4月30日は決算の申告書の提出日および法人税の納付の締め切り日だった。
朝から慌ただしかった。朝イチで東京の島津さんから届いた書類をもって、まず銀行に行ってお金を下ろし、法人の市民税の支払い。市役所に行って書類を提出した後、税務署に行って同じく書類の提出。それから車で30分かけて備中県民局に行って、書類の提出と納税。すべて終わって事務所に戻るとお昼になっていた。
さて、落ち着いたところで提出した書類の控えをぺらぺらとめくってみる。アジアンビ―ハイブ、初の黒字とあいなったのか?
結果は、たぶん黒字だ。この「たぶん」というのは、なんだかなあ、やっぱり数字の見方がわからないのである。でも、たぶんそうだ。確率からして7割ぐらいで当たっている。でも、何度か出て来るその数字の、最後の欄には頭に白の△がついてる。うーん、これやっぱり赤字ってことじゃないか? 7割はもとい、黒字か赤字か、五分五分だ。ぼくとしては、やっぱり白黒はっきりつけたい。でも、リュウくんに「これ見てくれよ」なんて頼めないし、税務署にこの書類をもって行って、「うちの会社、黒字ですか?」なんて聞くのもアホかと思われるし、島津さんにわざわざ電話をいれて確かめるのも気が進まない。さて、どうしたものか……昨年までの態度からして、どっちでもいいはずなんだけど、これが気になってしょうがなかったりするのである。