新・不定点観測

赤星豊

vol.440 リース不可

 事務所のプリンターを買い替えるプランがしばらく前から浮上している。現在、うちで使ってるレーザープリンターは、リュウくんが岡山の事務所で以前使っていたものだ。相当な気分屋で、毎度色の出方が違う。音がうるさい。A4をプリントしようとすると必ず紙づまりするなど、かなりの問題児である。
「もう我慢ならん、新しいのを入れる!」
 そう決断したのが1月のこと。すぐに某OA機器のリース会社Zに連絡し、コピー機との複合機の見積もりをお願いした。その時点では明日にも買い替えるようないきおいだった。ちょうどそんな折、12月に購入してあった現プリンターのドラムカートリッジとトナー4色分の請求書が届いた。そこにある数字を見て驚いた。なんと9万円台の数字が記されていた。高いとは聞いていたけど、なに、レーザープリンターのトナーってそんなに高いの? 
 新しい複合機購入の熱が一気に冷めた。リース会社Zには「新しいトナーがなくなるまで買わない」とすぐに伝えた。しかし、ぼくのいきおいを感じて、すぐに買ってもらえると思っていたZの担当者は簡単にはあきらめない。しつこいぐらいに購入をすすめてくる。断りつづけるぼくに、「せめてリースの申請がおりるかどうかの審査を」と言ってきた。将来的にトナーがなくなったら会社でリースすることになるだろうから、そのときのために会社でのリースが可能かどうかの審査だけでもやっておいたら話が早いというのだ。ならばというので審査だけ受けてみた。
 担当者から結果の電話がかかってきたのは一週間後。
「おのお、お父様に連帯保証人になっていただけませんでしょうか?」
 寝耳に水だった。プリンターのリースに連帯保証人? うちのオトン?
「あのね、うちのオヤジは年金生活者で80歳も近いの。そんな人間に、50歳も近い男が連帯保証人なんてお願いできると思います?」
「はあ、そうですか」
「なになに、それって、ぼくの会社が審査に通らないってこと?」
「いまはリース会社も厳しいですから」
「なんでうちの会社じゃ通らないの?」
「業歴もありますし……」
「業歴って、うちも設立して5年になるんだけど。何年やったら認められるんですか?」
「やはり10年ぐらいは会社をつづけておられないと」
「ああ、そうですか。わかりました。社会がいかに弱者に冷たいかというのがよーくわかりました。いいですよ、リースなんていらないですよ。現金で買いますよ。だったらいいでしょ?」
「はい、現金の場合は納品してその場でのお支払いになりますが」
「払いますよ、払います。その場で現金で!」
 ちなみにそのプリンターの複合機は120万円ぐらいする。いったい、そんな現金がどこにあるのだ?
 この時点でぼくに新しい人生の目標が生まれた。うちの事務所のプリンターのトナーがなくなるまで(たぶん年内!)。それまでに現金120万円を貯めること。かなりのミッション・インポッシブルである。いったい、そんな貯金、これまでしたことないし。でも、絶対負けられない。弱者の意地を見せちゃるけん!