新・不定点観測

赤星豊

vol.439 大遅刻

 ここのところずっと続いている3時間睡眠から脱却すべく、仕事を1時半に切り上げた。さすがに眠らないとカラダがもたない。家に帰って風呂に入り、2時にベッドに入った。朝の8時まで6時間は眠れる。こんな時間に寝るのはホント久しぶり。やっぱ人間、寝ないとね。6時間とはいえ、ああ、なんて幸せ。なんてつつましい幸せ―――眠れない。久々に眠れると思ったら、なんかワクワクしてきて眠れない。いつもは5秒以内には眠れるのに、30分経っても全然眠くならない。しょうがないから、ベッドから起きて、ソファに横になって毛布をかぶり、テレビをつけた。BSでオリンピックのジャンプをやってた。向かい風らしく、ことごとく距離が伸びない。距離が伸びないジャンプって、なんて退屈なんだ。これだったらいつの間にか眠れるだろうと思いきや、これがまたいっこうに眠くならない。結局、朝の4時まで淡々とつづくジャンプを見つづけ、またベッドに戻り、5時前あたり、やっと眠りに入った。その夜の睡眠時間2時間半なり。


 土曜日の朝、トーストの朝食を食べていたら、ヒトミちゃんから携帯に電話が入った。とろうとして、電話が切れた。でも、きっとあれだ。昨晩、電話で「調子が悪いから明日はもしかしたら」と言っていたから、「今日は休ませてほしい」という電話に違いない。もう間違いない。朝食を食べ終えたぼくは、またベッドに戻った。ヒトミちゃんが来ないんだったら、ちょっとぐらい遅刻してもいいだろう。朝は自分に甘いのがこのぼくなのだ。
 目が覚めた。1時間だけと思って目覚まし時計をかけていたんだけど、どうも目覚ましを切ってそのまま眠り続けたらしい。いまが何時なのかさっぱりわからない。頭は深い霧のなかに沈んだままだ。携帯を手にとる。留守電が入っていた。ヒトミちゃんだった。朝イチにくれた病欠届けの電話だ。とりあえず聞いてみた。
「もしもし、朝病院に寄っていくので、10時すぎになりまーす」
 思いもしなかった。なんて巧妙なトラップだ。頭のなかに立ちこめた深い霧が一瞬にして去り、ぼくは時計を見る……午後1時半。やっぱ人間、寝ないとね。でも、寝すぎとるね。すぐにヒトミちゃんに電話を入れた。
「もしもし、赤星です」
「はい」
「寝過ごしました。さっき起きました」
「はい」
「2時過ぎには行きます。どうもすいません」
「はい」
 またどっと疲れた。計算してみたら、8時間近く寝たことになるんだけど、眠い。めちゃくちゃ眠い。カラダも重い。全然休まってないみたいだ。


 事務所に着いてメールをあけると、翻訳の校正の催促が。「至急ください」とあった。そんなの言われても、ねえ。いろいろやることほかにもあるし。今日は寝たけど、あんまり眠った気がしないし。ぼくの都合はどうなるのよ? とは言いながらも、黒住みたいに催促を屁とも思わないような図太い神経ももちあわせていないので、たぶん今日も朝までやるんだろう。明日の日曜日もひとりで仕事してるんだろう。ああ、日曜日なんてはなからなきゃいいのに……。