新しいimacが出た。27インチのモニターで、なんかすごくいいみたいだ。でも、値段はそれまでの24インチとそうたいした変わりはない。ヒトミちゃんに新しいimacを買い与え、ぼくは2年以上前に買ったノートパソコンのmac bookでちまちまと作業している現状はなんかおかしいのではと常々思っていた。買うか、imac、27インチ。
インターネットでアップルストアにアクセスし、購入の手続きを始めた。メモリーのアップや、ソフトやら保険やらなんやらをオプションでつけていたら20万円を超えた。20万円か、やっぱそれぐらいになるよな。「カートに追加」にカーソルをもってくる。クリックすれば、もう買いだ。右手の人差し指でカチっとすればいいのだ、カチっで。でも、そこで逡巡するのが小心者編集長のこのわたし。「買っていいんだよ、これは。スプートニクの香川さんも、『絶対、買いッスよ!』って言ってたし」と黒タイツのぼくが右肩の上でささやく。一方、左肩の上では白タイツ姿のぼくが「本当にいますぐ必要なものなのか? これからヒトミちゃんにちゃんと給料を払っていけるのか?」と待ったをかける。もうどうしていいかわからず、買い物の最中でこのコラムを書き始めてしまった。もうすぐリュウくんがここに戻ってくるはず。ヤツに決断をゆだねよう。それまで保留だ。
日曜日、オトンとオカンの写真を撮った。
「いいカメラ買ったから、写真撮っちゃろうか?」
オトンにそう言ったら、
「そうじゃのお、撮ってもろうとくかのお」
乗り気なのか乗り気じゃないのかよくわからないが、天気もよかったので、久々に家族3人で外に出た。堤防のところまで歩いて行って、堤防を背景に写真を撮った。フィルムを2本使った。はい、これでおしまい。と、オトンが思わぬことを口にした。
「オカンのひとりのも撮っといてくれや」
それまで手をつないでふたり並んでいたのに、そう言ってオトンがスッと抜けた。
「はあ? 葬式の写真にでも使うん?」
「おお、そうじゃの」
オトンはシラっと言う。オカンはわけがわからず、「なんでひとりなん? なんでひとりなん?」と繰り返して聞いてくる。もう面倒くさいから、「オカン、撮るで」と言って、デジカメのレンズを向けて何枚かを続けざまに撮った。オカンはずっとポカンとした、間の抜けた顔をしていた。
「オトンのも撮っとくか」
それが公平ってもんだろう。オトンもそれはわかっていた。
「おお、ほんなら頼むがな」
いま、手元にそのとき撮った写真のデータがあるが、どれもサエない。納得がいかない。親の葬式の写真を撮るなら、子としてはそれなりの覚悟をもって撮りたい。再撮決定!
親の話を書いてたら、imacなんかどうでもよくなった。ついさっきまで右の肩の上にいた黒タイツのあいつはどこかへ行ってしまった。いまのところ、白タイツの勝ち。でも、ぼくの場合、黒タイツが突如現れ押し切ってしまうことが多々あるだけに、imacも時間の問題じゃないかと思っている。