新・不定点観測

赤星豊

vol.387 夜の精米

 連休最後の夜、10時すぎ。ぼくは宮脇書店の駐車場にある自動精米所にいた。大家さんの娘さんのミカちゃんとふたり。ミカちゃんはひとり娘のふみちゃんと千葉から帰省していた。
「なんで連休の最後に、こんなことしてるんだろうね?」
 ミカちゃんと、精米されてバラバラと落ちてくる白米を見ながらぼくがつぶやく。
「おかあちゃんと関わると、こうなるのよねえ」
 自動精米所は一畳の広さもない。蛍光灯の灯りがなんともいえず侘しさをつのらせる。


 電話でミカちゃんに「お米をもらって」と言われたのが午後9時すぎ。
「親戚から新米を60キロももらっちゃって、30キロぐらいもらってほしいんだけど」
「そりゃちょっと多すぎる。ひとに配るにしたって面倒だよ」
「そうよね。どうしようかな」
「じゃあ、とりあえず少しだけもらいに行くよ」
 大家さんの玄関ドアを開けると、目の前でミカちゃんが巨大な袋から3キロ用の紙袋に小分けしているところだった。
「これまたすんごい量だね」
「これがもうひとつ外にあるのよ」
 ということは、この巨大な袋が30キロ入りということか。
「でね、これ、精米してないのよ」
 精米してないお米なんて、もらってもどうすりゃいいんだ?
「あそこにあるわよ、精米所が。宮脇書店の駐車場のところ」
 隣で大家さんが言った。こうゆう流れを巻き起こすのはいつも大家さんであり、いつも巻き込まれるのがこのぼく。この半年間で、役割は決まっているのだった。というわけで、ぼくがミカちゃんと60キロのお米を車に積み込んで、精米所に行くことになった。ところで、なぜにあんなところに自動精米所が? しかも24時間営業で……。


 もちろん、ぼくもミカちゃんも精米なんて初めて。初めてなものだから、壁に貼られた説明書きをくどいぐらいに読み込んだ。料金は30キロで300円。投入口に百円玉を入れ、巨大な米びつにお米を流し込む。すると機械がうなり始め、ほどなくして目の前にあるさかさまにした三角錐の頂点から、精米されたお米がバラバラと落ちてきた。意外と簡単だ。30キロで10分か15分ぐらい。溜まったお米を足元にあるレバーを踏んで袋に落とすだけで、ほかにやることはない。おかげで半年ぶりに会えたミカちゃんとゆっくり話すことができた。ありえないぐらいの至近距離で。


 いま、事務所のテーブルに3キロ入りの米袋が3つある。表書きには筆文字で、「丹精こめたおいしいお米」。ところで、なぜにあんなところに24時間営業の自動精米所が? 思えば思うほど、昨晩の出来事が夢のように思えてくるのである。