新・不定点観測

赤星豊

vol.369 蟹バー

 昨日見た夢が、これまたキテレツだった。場所は東京、時間は深夜。ぼくはバーのような場所にいる。お客はみんな男ばかり。連れがいる客はなく、ひとり静かに飲んでいるような雰囲気である。「キテレツ」というのは、そのお客が食べている料理だ。みんながみんな小皿に盛った、ほぐした蟹の身を食べているのだった。いくら東京といえども、飲食の形態としてありえない。それにしても、なぜにそんな夢を見るのか? 蟹を食べたいなんて最近思ったこともないんだけど。しかし、それはその後にきたる真の「キテレツ」のプレリュードにすぎなかった。
 その後である、夢の。その蟹バーにリュウくん一家とカワベくんがやってきた。店に入るや、カワベくんが「終電に間に合わない」とぼくに訴える。どこに泊まっているのかまったくわからないまま、「じゃあ車をとってくるわ」とぼくは急いで店を出た。店を出る際、リュウくんに財布を渡してお勘定をお願いしておいた。車で待っているとすぐにリュウくん一家とカワベくんが車に乗り込んできた。そしてリュウくんから財布を受け取る。中を確認して驚いた。なんと、お札がすべてタイの通貨バーツなのである。あの蟹バー、おつりをバーツで渡しているのだった。ぼくはリュウくん一家とカワベくんを車の中に放ったらかし、脱兎のごとく店に戻った。
「なんでお釣がバーツなんだよ!」
レジのところにいたチョビヒゲにベストを着たオッサンに言った。
「バーツ、ダメですか?」
「あたりまえだよ、タイなんか行かないよ!」
「いやあ、すいませんね。バーツが使えなくて困ってて」
「そんなの知ったこっちゃないよ。ちゃんと円くれよ、円!」
 目が覚めたときも怒っていた。なんでバーツなんだよ、なんで……なんだこの夢は? あまりのキテレツさに、ヒッヒッと笑いがもれた。寝起き直後の顔で、ヒッヒッ。その姿たるや、とても他人様にお見せできるものじゃない。KJ編集長、気がふれるの図だ。


 問題は黒住だ。いつも問題は黒住光なのだ。今回もいつものようにしんがりだ。原稿、いまだ来ず。前号、ついに連載を勝手に中断されたと思い込んだ黒住は、「オレもついに愛想をつかされたか。HPのコラムは残しておいてくれ、時間があるときに書くから」とあんなにしおらしかったのに。半年経ったらまたこれだ。結局、この半年で映画のコラムも1本も書いてやしないし。この日曜日が最終入稿となっている。黒住の原稿が明日届いたとしても、英訳があるのでギリだ、ギリ。もうどうしてくれるんだ、黒住───と、編集者というのは、かようにストレスフルな仕事なのである。キテレツな夢も、ついついそこに原因を結びつけてしまう。蟹もバーツも黒住とは全然関係ないんだけど……。


 いよいよクライマックスだ。明日、東京に入稿物第一便を発送する。第二便はこの日曜日だ。トリオ食堂特集号、最後の追い込みである。