新・不定点観測

赤星豊

vol.324 芋ケンピ

 昨日、おかしな夢を見た。誰だかわからない3人とマージャン卓を囲んでマージャンをやってる夢。それだけならおかしくともなんともないんだけど、目の前に並んだマージャン牌が、なんとすべて芋ケンピでできているのだ(「芋ケンピ」とはサツマイモを原料とした菓子で、見た目はフライドポテトに砂糖をまぶしたような感じ。高知県の名物です)。長さも太さもバラバラで、これが掴みづらいことこのうえない。でも、まわりの3人はスマートに牌をひいては切っていく。ぼくは手にとるのもおぼつかなければ、そこから数字を読み取ることもできない。どうしたものかと困っていると、隣が「早くしろよ」といわんばかりに次の牌に手を伸ばそうとする。しょうがないから、ぼくは手の内にある芋ケンピの一本をテーブルの上に投げつけるように捨てた。と、その芋ケンピがポロリ、真ん中から折れてしまった。
「ああっ!」
 まわりから声があがる。ぼくは絶対やってはいけない大チョンボをやらかしたらしい。「ああっ!」の声には怒りさえも混じっている。
「だって、仕方ないだろう! これはイモなんだよ、イモ! 折れるにきまってるだろうがぁ!」
 逆切れしたぼくは手もちの牌をテーブルの上にばらまいてやった。テーブルの上はもう芋ケンピだらけ、なにをやってる場なのかさっぱりわからない滑稽な絵ではあるが、雰囲気はまさに一触即発。芋ケンピを囲んで殴り合いのケンカが始まってもおかしくない険悪な空気が……。
 そこで目がさめた。
 なんでそんな夢を見たのか、昼ぐらいまで考えていたけど、理由はさっぱりわからない。


 ついにマキナを買った。前にここでも紹介した中判カメラ、オークションで激しい勝負の末に競り落とした。これで2年かけて貯めた500円玉貯金が完全にすっとんだ。一カ月前には、会社の口座に3000円もなかったことを考えると、かなり無謀な買い物だったといえるだろう(「いえるだろう」なんて客観的にとらえているところがまた恐ろしい……)。
 届いた商品は、30年前に生産されたとはとても思えないほどいい状態だった。ボディ前面にある小さなポッチを押しながらレンズを引っ張ると、蛇腹が開いてガボっとレンズが飛び出てくるという機構なのだが、状態がいいといっても30年前のもの。そのままレンズごと抜けてしまうのではないかという不安があって、なかなかレンズを前に引き出す勇気が出なかった。ポッチを押してレンズを掴んでみるが、なかなか引っ張り出せない。結構、硬かったりするし。しばらくカメラを前に置いたまま、逡巡していた。その図は、江戸時代にタイムスリップしたヘリコプターが墜落して、村人がおっかなびっくり近づいて、しばらく棒でつついたりしているような感じだった。
 レンズを引っ張り出すことに成功し、ファインダーをのぞいて距離計を合わせたり、シャッタースピードをはかったりと基本的な確認作業を終え、裏ブタを開けて中を見てみた。かなりキレイだった。が、フタの四隅にはったモルト(パッキンのようなものです)がグズグズになってはがれかかっていた。これがもしも小さくはげてカメラの中に入ったりしたらエラいことだ。結局、岡山にあるカメラ屋さんまで行って、点検も含めてプチオーバーホールを依頼したのだった。
 カメラが再度ぼくの元に戻ってきたら、今度はいよいよフィルムを入れてのためし撮りに入る。なにを撮ろうか。桜も終わってるだろうし、とりあえずは身近なところで、人とか港の漁船とか撮ってみよう。写真家デビューの日は近い。