新・不定点観測

赤星豊

vol.256 忘れ物

 日曜日に開催した「出張カフin岡山」、ときどき小雨のパラつく天候にもかかわらず、大勢の方に足を運んでいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
 この日ははるばる東京からもお客さんが来てくれた。ターザン編集部のEさん、Wくん、そしてKJでシネマクラブを連載している黒住光だ。Eさんと黒住とは、4年前に一緒にアメリカ中西部→メキシコ→西海岸を旅した仲。実は出張カフの前日、彼らと広島市民球場に野球観戦に行った(現広島市民球場は日曜日が最終試合だった)。その夜、彼らは広島で一泊し、翌日、尾道観光を経て出張カフに来てくれたというわけだ。

 珈琲も接客も、おおむね成功に終わった今回の出張カフ。唯一の失敗は、BGMで用意していたガロの『学生街の喫茶店』をかけられなかったこと。絶対、忘れちゃいけないと、前日からCDを下駄箱の上に置いていた。そして、朝出かけるときにCDをバッグに入れ、会場となった街なかスタディルームに到着するやいなや、「これかけてください」とコイケさんに手渡した。なんの問題もないはずだった。ところが、だ。
「あれ、こんなことになってますよ」とコイケさん。ぼくに向かってガロのCDケースを広げて見せる。CDが収まっているはずのそこに、CDがない。
「ん? そんなはずは……」
 あ───あのCD、そういえば直前まで家で聴いていたのだ。ということは、ディスクはいまもうちのCDデッキのなか……。まあ、たまにあることなので、それほどショックってわけじゃない。『学生街の喫茶店』をかけられなかったことで、誰に迷惑がかかるわけでもないし───と、いつものように反省のかけらもなく受け流したのであった。


 ぼくの忘れ物もひどいが、Eさんのそれも相当にひどい。いろんな意味でひどい。今日の夕方、東京に戻った彼から電話があった。
「あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど」
 お願いというのはこうだ。昨晩宿泊した倉敷のホテルに忘れ物をした、その忘れ物を東京に持ってきてほしい、と。ぼくはたまたま明日の火曜日から土曜日まで東京に出張に行くことになっている。誠にありがたくない話である。が、Eさんにとってはこれ以上ないほどのベストタイミング。
「いったい、なにを忘れたんですか?」
「いや、広島で買ったお土産を」
 東京と川崎で育ったEさんには距離感がつかめないのかもしれないが、ぼくのいる児島から倉敷の駅近辺までは車で30分ほどかかるのだ。それでも快く引き受け、電話を切った。切ってすぐ、またEさんから電話が入った。
「あのさ、ホテルの人が11時までしかいないらしいから、よろしくね」
 夜も8時を過ぎて、「なんでオレが?」と愚痴りながら一路倉敷へ。きっかり30分でホテルに到着。フロントの女性に忘れ物をピックアップしにきた旨を告げると、奥から白地の紙袋を持ってきた。ゆうに30センチ四方はあった。な、なぜにこんな大きなモノを忘れる……。手にとると、しっかり重みもあった。てっきり、小さなモノだとばかり思っていたのに。おまけに、七五三の千歳飴みたいな形状の細長い袋が20センチぐらい飛び出している。ちらと開けてのぞいてみた。「広島カープかつ お好み焼きソース味」。かなりジャンボでジャンクな揚げカツだ。ほかには広島カープのイカ姿フライ、もみじ饅頭、尾道の観光案内などなど(全部見てやりました)。
 明日東京に到着してすぐの打ち合わせが2件ある。それでなくても荷物は多いのだ。そこにきて、打ち合わせの場にこの揚げカツやらイカフライやらを持って歩かなきゃいけないことを思うと、両の肩に憂鬱がべったりのしかかる。これはなにかの罰ゲームか? それだけじゃない。翌日も、夕方、マガジンハウスに行くまでその袋を持ち歩くことになるのだ。雨なんか降った日には、わたし、目黒川に身投げするかも……。


 週末、無事に東京から生きて戻ったら、京都特派員のマキちゃんとタッグを組んでの「第二回出張カフ」の企画に入ります。場所はもちろん、京都。関西の読者のみなさん、乞うご期待!