新・不定点観測

赤星豊

vol.178 黒住のミステリー

 この時期、ホント自分がイヤになる。もういまがギリ。これ以上原稿が遅れると発行日がズレこんでしまう。夏休みの宿題にたとえると、今日あたりは8月30日に相当するのだ。なのに、昨日の日曜日、朝起きたら11時だった。とりあえず、テレビをつけてソファに横になる。と、NHK教育テレビの将棋対局で、渡辺竜王がA級の深浦と対戦しているじゃないか。もちろん、12時まできっちり見た。それからおもむろにお風呂に入って、湯船のなかで『ラブ・アクチュアリー』のシナリオ本を読んで英会話の勉強。お風呂から上がると、頭を濡らしたまま天満屋ハッピータウンに夕飯の買い物。日曜日の夜は、オトンの大好物の雑煮を作ってやる約束をしていたのだ。家に帰って冷凍しておいたタイラギ貝の貝柱を煮付け、ほうれん草を茹でて夕飯の準備は完了。この時点ですでに2時を過ぎていた。当然、そこから深夜まで原稿書き、となるはずだった。
 結果は、惨敗である。日曜日の夕方、しなくてもいい部屋の掃除をし、たまたまケーブルの映画チャンネルでやっていた『フィールド・オブ・ドリームス』を見、あろうことか、その直後に放映した『ノイズ』まで見てしまった。それまで見ないようにしていた時計を見ると、すでに深夜の1時すぎ───自分がイヤになる、というのはひとえにこの逃避癖ゆえである。

 本当は原稿をまだあげていないことをこんな風に書いちゃいけないのだ。黒住光がこのコラムを読んで、「あれ、まだ赤星は原稿書いてないの?」と、KJに連載している自分の原稿の締め切りを勝手に遅らせてしまうのが目に見えているからだ。でも、そんなにズルい人間なのに、しかもそのズルさや弱さを隠すことなく、開き直ってふてぶてしくさえあるのに、この黒住光というオトコは憎まれることがない。憎まれないどころか愛されている。これぞまさしくミステリーだ……。