新・不定点観測

赤星豊

vol.173 牡蠣たらふく

kaki%20market.JPG「日生」と書いて「ひなせ」と読む。岡山県内に住んでいる人ならたいていの人は知っている。ここは牡蠣の養殖でつとに知られるエリアだ。
 連休なか日の日曜日、突然、牡蠣が食べたくなって日生に行ってみた。普段は休みといってもほとんど出かけないぼくだが、先週の湯郷→奈義町ドライブでいきおいがついたらしい。児島から車で1時間15分。到着した海沿いの町は、まさにぼくがそうだったように、休みに牡蠣を食べたくなった人たちでごったがえしていた。車のナンバーを見ると、結構遠方からやってきている。県内だけでなく、姫路や神戸、福山、それになぜか広島から来ている人も(広島の方がずっと有名でしょうに、なぜに?)。


 市場で買った牡蠣をその場で焼いて食べられるバーベキューのコーナーは人がぎっしり。ディズニーランド級の混み方なので、ぼくは簡単にあきらめて、「かきおこ」と呼ばれる牡蠣入りのお好み焼きだけでも食べて帰ろうと一軒のお好み焼き屋に入った。と、そこで後ろから「赤星さん!」と声をかけられた。見ると、先週、奈義町現代美術館で会い損ねたアーティストの廣中薫さんがそこに(ぼくが帰った直後、作品の搬入に来たというのを翌日聞きました)。ご主人の瀧本さんも一緒である。おふたりも「休みになると牡蠣を食べたくなる」菌に冒されたのか、わざわざ電車で岡山から牡蠣を食べにこの日生まで来たらしい。廣中夫妻もぼくも日生訪問は初。「ここで牡蠣を食べるのが夢だったんですゥ!」と廣中さんはいつもの調子で。それにしても恐ろしいね、この偶然は。
 しかし、この偶然は思わぬ幸運をもたらしてくれた。ぼくがあきらめていたバーベキュー、ふたりは「1時間半待ち」と言われながらも予約を入れていたのだ。ぼくたちはサクっとお好み焼きを食べ、それほど時間を置くことなくバーベキューへと突入することができた。市場で殻つきの牡蠣をどっさり買って、指定されたコーナーへ。その後は、椿三十郎の殺陣のように、牡蠣を焼いては食べ、焼いては食べ。「最近、どうですか?」みたいな世間話も一切なし。会話といえば、「これ、そろそろ食べられますよ」とか「醤油をかけると香ばしくて美味い」とか「ウェルダンもまたイケますね」とか、アーティストと大学助教授と編集長という取り合わせとはとても思えない会話に終始し、ひたすら牡蠣を食べまくったのだった。


kaki.JPG ほぼパンパンの胃袋は、スーパーとかでよく売っている剥き牡蠣の袋状態。こんなに牡蠣ばっかり食べたのは生まれてこのかた初めての経験だった。
 休みになったら牡蠣を食べたくなるのも、もうしばらくはないと思う。というか、もうそんな悠長なことをしている場合じゃないのだ。1月も、餅を食べたり牡蠣を食べたりしているうちに、ほぼ半分が終わってしまった。ヤバい、ヤバい、さすがに次号にとりかからないと───と、いつものようにまわりの人を巻き込む勢いで焦りながらも、今日の火曜日はカメラマンのイケちゃんと六口島でのんびりランチなぞ楽しんでしまった。その詳細はまた次回に。(写真はバーベキュー風景、左の脚が廣中さん、右が瀧本さんの脚です)