先週もひとり、入社志望者の来社があった。その方、なんと大阪から来たという。メールのやりとりでは住所を記してなかったので、てっきり倉敷か岡山の人だろうと思っていた。最初は脚なんぞ組んで軽い気持ちで話していたけど、大阪からとわかってからはぼくの方が恐縮しまくり。思わず「すいません、すいません」とわけもなく謝り、お昼にはイーハトーヴのカレーをご馳走し、最後にはお土産まで持たせてしまいそうな勢いで恐縮しまくったまま見送った。
最近、大学生の男子からメールをもらった。DJをやっていて、フェスで回したいとあった。ぼくはこんな返事をしたと思う。「あなたとは会ったこともないし、DJをやっているのを見たこともないので、DJをやる機会があれば見に行きます」と。すぐにメールが返ってきた。そこにはDJとして参加するイベントの日時が記してあった。そしてメールの最後に、ぼくと会ったことがあるとあった。「先日、ビデオレンタルショップでカウンターにいたスタッフがぼくです」。ぼくは咄嗟に思い返す。もちろん相手の顔なんて憶えてやしない。思い出そうとしたのは、そのときに借りた映画だ。あのとき借りたのは……あれだ、『アンダーグラウンド2』。吸血鬼と狼男が戦争するヤツ。なんて映画だ、しかもこれ続編だよ。それから『幽霊大戦』とかそんなタイトルの香港映画で、キョンシーを退治するお坊さんの話。もしもタイトルを見られていたら、バカだと思われかねない。「こ、これがKrash japanの編集長が見る映画……」と絶句したかもしれぬ。絶句したいのはオレの方なのに……。
ちなみにこの彼とはその後、メールにあったイベントで会って、フェスで回してもらうことになった。なかなかいい子だった。いい子なのだが、行き着けのビデオレンタル屋にいるというのはぼくにとってどうにもありがたい話じゃない。
今日もヤツがいた。だいたい、半額デーの月曜日に来ているのを見られるだけで恥ずかしいのだ。ぼくはそういうところではかなり自意識過剰な男であるからして、映画をセレクトするのにもついついヤツの目を気にしてしまう。不思議と目につくのはアホみたいなB級映画ばっかりだ。そうじゃなきゃ、杉本彩の『花と蛇2』がやけに気になったりする始末。いつもこんなじゃないのだ。クラシックだって文芸作品だって見るし、黒澤や小津も見る。クストリッツァとかクラピッシュとか、ヨーロッパの今の監督の映画も好きだし。なのに、ヤツの目を意識すればするほど、そういったいかにも編集長が見そうな映画のタイトルが味気なく思えてきて、逆に中身がないのがタイトルだけでわかるようなそのタイトルにひかれてしまう。結局、15分ほどしてあきらめて、カウンターに背を向けたまま逃げるようにして帰った。ああ、しばらく月曜日にはあそこに行けない、半額だってのに……。
見知らぬ人からメールをもらったときは、こっちもある程度の情報収集をするべきなんだろう。住所はいわずもがな、どこで働いているかとか。でも、だ。正直、相手をほとんど知らないまま会うというのは非常に面白い体験でもある。こうしていろんな人と日々会って思うのは、人というのはホントに千差万別。同じ人というのはありえないし、同じタイプとしてくくるのさえ難しい。情報がほとんどなく会うというのは、感覚的には、今日は火星人で明日のお方はヴェガ星雲から、といった感じ。そう、最近あらためて気づいたんだけど、人と会うのはかなり楽しいことなのだ。