7月13日、木曜日。昨晩、当編集室に面白いお客さんがやって来た。ウェブ上で、コアなデニムファンからカリスマと崇められている「デニムジャンキー」。例の、夜のおもしろスポットツアーのメンバーのSGFサトちゃんが連れてきてくれた。はじめは正体を明かさず、こ一時間ぐらい世間話で盛り上がっていた。と、彼が突然、「実はぼく、デニムジャンキーなんです」と恥ずかしげに笑みを浮かべて。これまでいろんな告白を受けてきたが、「ぼく、デニムジャンキーです」は初めての経験だ。
「ん、それってどういうこと?」
「え、だから、ぼくがデニムジャンキーなんです」
「あ、そうなん?」
「はい」
とても「ジャンキー」と「編集長」のやりとりとは思えないこの間の抜け加減。で、そのデニムジャンキー氏が、おもむろに「これはいてみてください」と1本のジーンズをとりだした。現物は1カ月ほど前に倉敷のSGFのアトリエで見ていた。その名も「ROUTE430ジーンズ」、デニムの聖地・児島をイメージして作った希少なジーンズである(「430」は児島を走る国道430号線のこと)。ぼくは「その手のものは受け取れないんですよね」なんて言わない。そんなこと言うべきかどうか考える前に、はいていたパンツを脱ぎ始めていたのだった(下着のパンツじゃないです、念のため)。
実に生な感じの硬派なブラックジーンズのストレート、オレンジの糸が鮮やかだ。はいた感じはかなりタイトだった。丈が長いのでグイグイ腰の上に引き上げていると、背後でサトちゃんが「若干、腰ばきでお願いします」とクールな声で。出た、恐怖の腰ばき。「いったい43歳にして許されることなんだろうか?」と戸惑いながらも言うなりに。着せ換え人形状態のぼくを見て、デニムジャンキー氏もSGFサトちゃんもなんだか嬉しそうである。
その後、スペックを説明してくれた。そりゃあもうジャンキーなわけだから、「そこまでせんでも」と突っ込みたくなるぐらい随所にこだわりが散りばめられている。でも、なにより感心したのがそのシルエットだった。「オレも捨てたもんじゃないじゃん」と勘違いしてしまうそのラインのカッコよさ。うん、これはかなりイケてるよ。
もちろん、ジーンズをはいてくれなんて言われるのは望外の幸せである。しかし、それ以上に嬉しかったのが、彼らが児島をモチーフとして取り上げていることだった。彼らは児島にゆかりがあるんだろうけど、児島の出身者じゃない。そんな彼らが児島を好きになってくれて、児島を作品に反映させてくれる。子供のころからいまも変わらず児島を愛するぼくとしてはこんなに嬉しいことはない。
彼らが帰った後、「デニムジャンキー」のホームページを見た(0)。430ジーンズのはきこみの経過がレポートされていた。1カ月後にはすでにいい感じになっている。いやあ、楽しみだ。これからガンガンはきこんでいきたい。もちろん、「若干の腰ばき」で。みなさん、倉敷・岡山界隈でタイトなブラックジーンズをはいてるオッサンを見かけたら、優しい目で見守ってあげてください。倉敷の滞在日数、40日ぐらい(写真はROUTE43。ジャンケンTと一緒に当編集室にて展示中)