新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.89 倉敷(8)

089.jpg いよいよタイトルを再考せざるをえなくなったかもしれない。あっちゃこっちゃへ行くはずの「不定点」が、どっかり腰を据えての「定点」になっとるがな。
 児島に編集室を構えてからはなおさらだ。それなりに1日のルーティンもできあがってる。午前9時起床。オトンとオカンに「ご機嫌いかが?」と朝の挨拶をすませてそのままお風呂に入る。カラダもすっきり、目覚めもすっきりしたところで2階に上がって、大リーグ中継を見ながら歯を磨く。すぐさま1階のリビングに降りて、新聞を読みながら両親とコミュニケーション。何気ないこの会話が実は大切で、本日の昼食と夕食の献立のヒントを得たりするのである。午後10時30分、昼食の準備開始。材料は冷蔵庫にあるものでだいたいすませるが、たまに空っぽに近い状態のときもあって、そんなときは朝から買い物に行ったりもする。
 午後12時30分。両親との昼食を終えてからKJ編集室へ出勤。天気のいい日は徒歩で、雨の日は車で行く。時間はどちらも5分かからない。仕事の昼の部は午後5時まで。そこで仕事をいったん切り上げ、近所のスーパー「マルナカ」へ。駆け足で買い物をすませ5時15分には帰宅。大急ぎで夕食を準備し、5時45分に夕食。6時30分には洗い物まで終わらせ編集室へ再出勤。この第二部がぼくにとっては本格的な仕事だ。そして、午後11時。1階のお店の閉店とともに編集室を後にする───と、まあこんな感じの毎日を過ごしている。時間に追われるのは食事の用意だけで、あとはだいたいのんびりしている。編集室にはお客さんもたくさん来てくれるし、ペグ犬のベックも最近は週に2日はいるしで結構楽しい。腰を据えての「定点」だけど、悪くないのだ。

 5月26日、金曜日。『月刊タウン情報おかやま』の6月号が届いた。この号に、なんとKJが紹介されている。編集者のマイブームを伝える「EDITORS EYE」というコラムでTシャツを紹介してもらったのだ。
 この雑誌、実はぼくが倉敷にいた中学時代によく読んでいた。当時は版型も小さくて、30ページぐらいのペラペラの雑誌だった。それでも、岡山によく映画を見に行ってたから、上映スケジュールのチェックに必須アイテムだったのだ。たまにデートで岡山に行くときにはお店の情報もチェックしたりした。
 今でもよく憶えている。中学3年生のとき。ミエちゃんと岡山70mmグランドに『スター・ウォーズ』を見に行った。その日、ランチで行ったのが駅近くの「星の王子さま」という、まことにガーリッシュなネーミングのパスタ屋さん。前もって『タウン情報おかやま』でセレクトしていた。当時はパスタ屋なんて珍しかった。岡山では先端を行ってたんだと思う。
 ぼくはカルボナーラを注文した。そんなもん食べたこともなかったけど、「カルボナーラがおいしい!」とか記事にあったのだ。数あるパスタメニュー、彼女にはメニュー選びでも楽しんでほしかった。「わあ、これなんだろうね?」「これ、おいしいのかな?」てな感じで。ところが彼女は違った。店やメニューに対してのコメントは一切なく、オーダーをとりにきたウェイトレスに一言、「カレーライス」。「そんなん児島の喫茶店で食べられるがな、なんで岡山まで来てカレーなんよ」と心のなかでつぶやきながら、しばし無言でカルボナーラを食べたのであった。『タウン情報おかやま』には胸がキュンとするような思い出がつまってます。倉敷の滞在日数、1カ月が過ぎようとしてますな。(『タウン情報おかやま』の小林さん、どうもありがとうございました。これでTシャツ、バカ売れです)