KJ編集長は本格的なエビチリを作れたりする。料理の専門誌以外じゃそういないだろう、という料理自慢で今回は始まるの巻。我が家では、しかしあにはからんや、この「本格的なエビチリ」の評価が芳しくない。つまむ程度にしか食べてくれない。
あるとき、スーパーでエビを売ってるすぐ横に「エビチリがすぐできる!」的サブタイトルのついたインスタント・エビチリソースを発見した。エビを炒めてソースをからめるだけ。ためしに買って作ってみたところ、これがえらく評判がいい。しばらくして、「あの赤いエビのやつ、また作ってくれえや」とオトンからリクエストがくるほど。こっちは簡単だから楽でいいんだけど、なんか納得しかねる。というか、腹が立つ。
うちのオカンは相変わらず魚を食べてくれない。最近は歯が悪いもんだから、肉も野菜もちょっとカタいと食べてくれないし。先日、アスパラガスの牛肉巻きを作った。いつもよりもやわらかめにアスパラガスを茹で、さらに食べやすい大きさに切って食べさせた。8割がた食べ終わってフォークを置きながらオカンが言った。
「今日の食事は───」
はて、今日の食事は?
「わたしの口に合いませんでした」
「…………………」
オトンもぼくも言葉を失った。何を言い出すかと思ったら、「わたしのお口に合わない」宣言である。わしゃ、エリザベス女王の料理番か? さすがのオトンもオロオロして、「まあそうゆう日もあるわな」とフォローに回った。そんなオトンには知らん顔で、オカンは歯を「シーハーシーハー」鳴らしてる。オトンもぼくも、もう笑うしかないよ。笑いが絶えない理想的な家に、我が家はまた一歩近づきつつあるようだ。
5月1日、月曜日。今日はペグ犬のベックの出勤日。出勤早々、2階のKJ編集室にあずけられ、犬にあるまじき姿で寝入っている(写真)。すぐにカワベくんがやってきて、イビキをかきながら眠るベックの横で、1階から運んでもらったハヤシライスをおいしそうに食べている。これぞぼくの描いた青写真通り。日本の『Wallpaper』編集部って感じで素敵です(『Wallpaper』はこんな感じじゃありません。はっきり言ってかけ離れてます)
彼らに「行ってきます!」と言ってぼくは一路倉敷へ。今日は大原美術館の藤田さんとお茶の約束をしていたのだ。場所は中銀の近くのカフェ「スローハンド」。藤田さんは淡いグリーンの半そでのニットに花柄の涼しげなスカートという素敵ないでたちで現れた。1時間ほど話した後、ふたりで美観地区を歩いた。彼女、なんと日傘をさしてた。日傘をさしてる女性と美観地区を一緒に歩くってのは悪くないね。『それから』で藤谷実和子と並んで歩く松田優作の気分を楽しませてもらった。
夕方、家に帰ってエビのマヨネーズソース和えを作った。もちろん、インスタントで。たまには趣向を変えてと思って買ってみたんだけど、これはウケなかったね。「大丈夫じゃ」というのがオトンの感想。料理の感想として、「大丈夫」というのはいかがなものか。でも、オカンに「口に合わない」宣言されなかっただけ、ありがたいと思っておこう。倉敷の滞在日数、8日間経過。