新・不定点観測

赤星豊

vol.8 きれいな日本語

 昨晩、KJエディター塾の第一回を開催した。参加してくれたのは、福山でタウン誌の編集をしているKさんと、倉敷市内でデザインをやっているOクンのふたり。「たったふたり?」と思うかもしらんけど、かなり高い確率で「ゼロもありうる」と想定していただけに、内心ホッとしました。でも、かなり高い確率で「ゼロもありうる」と想定してたから、何をやるかまったくのノープラン&ノーアイデアだった。慣れてるなんて思ってもらっちゃこまる。人に教えるのは20年前に母校の児島高校で教育実習をやって以来だ。

 Kさんは福山の代理店に勤務していて、会社が発行しているタウン誌の編集に携わっている。以前にも編集室に来てくれて、この塾をやろうというのも彼女のアイデアからだった。Oクンは昨年秋にデザイナーとして独立。メイカーの広告や制作物のデザインを主に手がけているが、同時に兼ねることが少なくない編集やライティングにまったく自信がないという。いかにも「よわってます」というへたれたオーラが出まくっている。
「情報をまとめるのが苦手なんです」
「そうだよね、まとめるの、難しいよね」
「コピーもちょうどいまやってるのがあるんですけど、これがまた難しくて」
「そうだよね、コピーは難しいよね」
「……そうですね」
「そうだよ」
「…………」
 万事がこんな具合だったわけでもない。Kさんが絶妙なタイミングでうまく水を向けてくれるのだ。
「赤星さんって、いらないものをバッサリ切りますよね」
 これはもちろん、文章のことを言っているのだよ。
「切るよ、おれ。結構切るね」
「文章で一番心がけてるのは?」
「やっぱりきれいな日本語だね」
 いやあ、答えがキレてるね。なんか日ハムの新庄っぽい感じがしなくもないけど。
「きれいな日本語というのがよくわからないんですよね」とOクン。
「Oクン、本は読む?」
「いや、ぼく本が読めないんですよ。小説なんか読んでも、何を言ってるのかさっぱりわからないんです」
 こりゃ重症だ。こんな重症患者が1回目から来るとは思わなかった。
 こうして、この日の文章講座は「本を読め」で終わった。しかし、これで受講料をとるのも気がひけるので、目黒三九の『ポイズン』をふたりに無料で進呈した。いやあ、実に濃密な時間だったね。「じゃあ今日はそろそろかな」とぼくが言うと、Oクン、「え、もうそんな時間ですか?」と。不思議なことに、ふたりともすごく満足そうな笑顔で帰っていった。彼らの反応からすると、第一回のエディター塾は大成功に終わったようだ。
 第二回は10月3日(火)の午後8時から。受講はいつでもメールで受け付けておりますので、興味のある方は是非参加してみてください。ま、こんなのでよろしければ。