新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.78 東京(3)

078.jpg 東京最後の夜。プシェメクには昨晩から彼の友達の家に移ってもらっている。今この瞬間、部屋にはぼくひとり。今日の昼にかなりの荷物をまとめて倉敷に送っているので、久々に部屋のグチャグチャの状態から解放されて気分は悪くない。まあ、それでもプシェメクの荷物はあちこちに散乱しているんだけれど。
 今回倉敷に戻ると2カ月ぐらいは東京に戻る予定はない。これまで、東京を離れることに寂しさを感じたことはほとんどなかったように思う。なのに、今晩は何かがちょっと違う。「寂しい」というのともちょっと違う。なんというか、「むなしい」というのが一番近い気がする。でも、いったい「むなしい」ってどういう意味だ? なんの理由もなくむなしい───なんてことがあるんだろうか。人間、そういうこともたぶんあるんだね、とまた新たな発見。アル・グリーンの『Let’s stay together』を聴きながら、プシェメクが残して行ったバナナを1本食べてると、ちょっとリカバリーしてきた。これでバファリンとリポビタンDがあれば完全復活できるんだけど。今夜は熱いお風呂にでも入って、早く眠るとしよう。

 4月14日、金曜日。先週の土曜日から1週間の滞在で、野球を3試合こなす予定だった。ところが雨で2試合が中止。残りの1試合は例の風邪で欠席する羽目に。なんてことだ。4月も中旬だというのに、今年はまだ1試合も消化していない。来週からずっと倉敷だっていうのに。今夏発行予定のvol.3の出来が悪かったとしたら、それはきっとぼくが野球をしなかったせいだろう。
 4月も中旬。でも、まだ次号のテーマが決まっていない。昨晩はPOPEYE編集部にTシャツのPRに行った帰りに、黒住光と、ターザン編集部の遠藤成さんと、京橋で第一回のKJ編集会議を開いた。韓国料理のブテチゲ(ウインナーやラーメンが入った鍋です)をつつきながら、「ああでもない、こうでもない」と話しているうち、遠藤さんがうかつにもこんなことを言ってしまった。
「アメリカのどこかの街で見たローカル新聞、あれ面白かったよなあ」
 その一言で、話は2年前に3人で行ったアメリカ中南西部の旅にすりかわり、二度とKJのネタ探しというその日の主題に戻ってくることはなかった。今晩もアートディレクターのニシハラくんと恵比寿で焼肉を食べながら次号のテーマの相談をしたんだけど、決定にまでは至らなかった。
 ファッションの撮影もいまだはっきりとしたプランはたっていない。8月末の発行を公言しているからして、6月には制作にとりかからなきゃいけない。これまで、不思議とネタをどうしようかなんて悩んだことはなかった。それだけに、ちょっとスランプに陥っているような錯覚をおぼえてしまう。イチローは昨日3安打、今日は第1号のホームランを打った。どうやら開幕からのスランプを脱したようだ。さすがイチロー、スランプも短いね。おれも打ってみたいよ、ホームラン。そういえば、昨シーズンはホームランを1本も打てなかったし。ああ、やっぱり野球したいんだな、おれは。野球を何試合かしたら、ネタも自然と浮かんでくるような気がするぞ。東京の滞在日数、7日間(写真は宴の後、いや編集会議後のブテチゲ。話は身にならなくても、しっかり食べつくしてます)