最近、オカンがよく不思議なことを言う。「あのオジサンはどこに行ったん?」とか、「あの女の人は誰?」と。オトンが「そがな人はおらん」と言うと、「さっきまでいた」と言い張って、家のなかを探し回る。オトンがほとほとよわって、どう対応していいかをぼくに聞くので、「さっき帰ったとでも言うときゃええがな」と適当に応えていた。
先日、一緒に夕飯を食べているときだった。オカンがぼくの顔を見て聞いた。
「あのオジサンはどこにおるん?」
ぼくはオトンに見本を見せるべく、きっぱりと言った。
「帰ったよ、さっき」
「帰ったん?」
「うん、もう来んと思うわ」
オカンは何も言わなかったけど、どうも納得しかねている顔だった。
その夜、ひとりで二階の部屋にいて、ぼくはなんとなく落ち着かなかった。夕食のときのあの会話が妙に気になっていた。オカンの言う「あのオジサン」やら「女の人」が、もしかしたら本当に見えていたんじゃないだろうかと思ったりしたわけだ。オトンもぼくもボケてると思い込んでるけど、でもあれがオカンのシックス・センスのなせるわざとしたら……。
何が恐ろしいって、やっぱり幽霊が一番コワいね。この世で一番コワい。なのに、よりによってうちのなかにそれがいる……と、今日も夜になるとビビりまくりのKJ編集長であった(夜中にトイレから帰るときの階段の上りは一段飛ばしの駆け足です)。
3月16日、金曜日。今日は昨日とうって変わって快晴だった。我が町・児島は晴れるとホント気持ちいい。空と海の青さを同時に感じられるこの環境、もう最高なわけ。車でただ走ってるだけで幸せになれる。東京もそれなりに気持ちいいんだけど、なんだろう、児島の方が断然開放感があるのだ。
午後から児島図書館に『ポイズン』を寄贈に行った。児島らしき町が舞台になってる純愛小説、児島の純真な子供たちに是非読んでもらいたいのだ───というのは冗談で、映画ならR指定を受けそうな話だけに、子供の手の届かないところにひっそりと置いてもらいたい。
「じゃあ、郷土資料のところに置かせてもらいます」と職員の女性(高校の同級生でした)。
「いや、郷土資料とは違うと思うんだけど……」
「郷土の方が書いたものもそこに置いてあるんです」
「はあ、じゃあそこで……」
という成り行きで、あのようにイカれた本が児島図書館では「郷土資料」のコーナーに並べられることになった。うーん、ちょっと罪の意識にかられますな。いいんかいな、ホンマに。それから児島の「イーハトーブ」にKJを補充しに行った。このお店、ぼくが高校3年のときに通った塾の先生の娘さんがやってる人気喫茶店である。ここでおいしいコーヒーをいただきながら、しばらく娘さんと話した。ここんちはカレーが有名だが、まだ食べたことがない。今度は是非カレーを食べに来るとしよう。KJ編集長はいつかKJで「カレー特集」をやりかねないほどのカレー好きなのである。無類のコワがり屋でカレー好き。これって、もろ子供じゃないッスか。倉敷の滞在日数、19日間経過(なんか最近、経過日数の数え方に自信がありません)。