新・不定点観測

赤星豊

vol.68 雑誌は読むより作るほうが面白い

 月曜日の朝、目を覚ました瞬間に気づいた。尻に火がついとる───。もちろん、うちが火事になっていたとかそんな状況を言ってるんじゃない。
 KJの入稿が目の前に迫っているというのに、どうもモチベーションが上がらずにいた。毎度のことながら、ホントのギリのラインに足をかけないと腰が上がらない。少々の火じゃ気づかないのだ。正常な感覚の持ち主がぼくの今のお尻を見たら、火がついてるどころか「炭化してる……」と絶句するかも。さて、一度エンジンがかかったぼくはセコもサードもすっ飛ばして、いきなりトップギアだ。トップに入って気づいたが、やらなきゃいけないことが山ほどあった。「オレ、いままで何やってたん……」と茫然自失するのは一瞬で、次の瞬間には見ないふりしてやり過ごしてきたことを勢いにまかせて片っ端から片付けていった。
 鬼神も避けて通る勢いであったからして、このコラムも存在すら忘れていた。だが、飛ばしすぎた。今日、水曜日になってもう息切れした。で、いまこうやってコラムを書いているわけである。ハイみなさん、またお会いしましたね(淀川長治風ですな)。

 今日、岡山のタオルのところに行って、デザインの打ち合わせをしてきた。サンプルのレイアウトがいくつかあがっていて、そのなかにポーランドで撮ったファッションのページがあった。驚いたね。まさかこれがKJとは思えない。だって、映っているのはみんな金髪のおねえちゃんだ。それも『VOGUE』に出てくるような。ま、ポーランドで現地のプロのモデルを使って撮ったのだから当たり前の話なんだけど(しかもぼくはその現場に立ち会ってたんだけど)、なんだろうね、KJって全然倉敷のタウン誌って感じじゃないね。そしてファッションページのあとには下津井特集───。もう常軌を逸してるな。

 ようやく4人のアーティストの作品が出揃った。ヒロナカさん、マチェイ、ニョンくん、西浦裕太くん。彼らの作品はいいよ。同じ下津井を題材にして作ったとは思えないほど作品もテイストも見事にバラバラ。でも、これでいいのだ。今日の午後、データをCDに焼いて、大阪のマー坊のオフィスに材料を全部送った。マー坊は大阪在住のデザイナーで、15年来の友達だ。今回、彼にこのアーティストのページのデザインをお願いしてみた。マー坊がこの材料をどう料理してくれるか、楽しみで仕方ない。

 この時期、楽しみと苦しみを両方同時に味わう。楽しみはページがカタチになるのを見ること。苦しみは、いわずもがな原稿執筆だ。この楽しみと苦しみはともに生半可じゃなくて、メーターを振り切るぐらいのレベルにある。でも、生きてるって感じがする。雑誌は読むより作る方がはるかに面白いのだよ。『エクソシスト』を監督したウィリアム・フリードキンが監督業についてこう言っている。「監督させてくれるのなら、列に並んで、お金を払ってでもしたい」。ぼくも同じ気持ちだ。金、ないけど。