新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.66 倉敷(3)

066.jpg 3月8日、水曜日。「やっぱり水島のヒトに読んでもらわな」というので、今日は朝から水島にでかけた。『ポイズン』の販売の件で、連島にある書店「my Bookshelf Yamana」の山名さんに会ってから、すぐに水島の商店街へ。ここの商店街はホント、やってるんだかやってないんだか、外見から判断しにくいこと。とくに午前中ともなればなおさら。
 手当たりしだい、開いてるお店に配りました。レコード屋さん、カメラ屋さん、喫茶店、洋品店、またまた喫茶店。どこもなんとなく妙に気詰りな感じがした。たぶん、ぼくが悪いのだ。またまたヒゲ面で怪しげだから。「すいません、水島の雑誌を作ったんですけど」とぼくが言うと、ことごとく怪訝な顔をされた。どっかの政治団体が本の押し売りにでも来たんかい、みたいな扱いを受ける。そしてその場のカタくてマズい雰囲気にさらにしどろもどろになって、「ごめんなさーい!」と言わんばかりに雑誌を置いて逃げ帰る。そんな繰り返しだった。いやあ、苦手なんだよね、こうゆうの。アタマ、悪そうだね。

 お昼過ぎには水島の朝鮮学校に行った。本誌にも書いたが、水島には県内唯一の朝鮮学校がある。特集内で紹介しようと取材を申し込んだんだけど、実現しなかったといういきさつがあった。でも、校長先生の趙さんはすごく誠意をもって対応してくれたので、ぼくも誠意を見せようと出来上がった雑誌を持って行った。
 校長室をノックすると、「はい」と渋い声。そっとドアを開けると、民族衣装を着た女性が目に飛び込んできた。どうやらお客さんのようだ。かなりの美人だったけどね、ニコリともしないんだな、これが。そしてその向かいに校長先生。やっぱり訝しそうな顔をぼくに向けて。「あ、あのお、以前に雑誌の取材を申し込んで───」と言うと、「ああ、あのときの」と席を立ち、笑顔で迎えてくれた。「わざわざどうも」と丁寧にお礼を言われ、ぼくは「いやあ、こちらこそ突然すいません! すぐに帰ります!」と返して本当にすぐに帰った。帰り際に、機会を改めて取材を申し込むと約束した。マジでいつか取材しようと思ってる。

 昼食に港の近くのうどん屋でうどんを食べているときだった。窓からタクシーが見えた。よく知ってる運転手だった。水島港の船の待合所(写真)でいつも客待ちをしている運ちゃんだ。ぼくが港に休憩に行くといつもいるので、いつの間にか知り合いになった。1時間ぐらいずっと話してたこともある。昔の水島の話もいろいろと聞かせてもらった。実はうどんを食べたら、彼に雑誌を渡しに港へ行こうと思ってたのだ。でも、どうやらお客を乗せてどこかに向かったようだった。すぐに帰ってくるだろうと思って、うどんを食べたあと、港の待合所のすぐ近くでしばらく待っていた。運ちゃんは帰ってこなかった。倉敷駅か、もしかしたらもっと遠いところまで行ったのかもしれない。まあ、また会えるだろう。これまでもさんざん会えたんだから。いいお客さんを乗っけられてよかったなあ。

 本誌の冒頭「krash eyes」で「(水島を)今やどうしようもなく愛している」と書いた。結構、恥ずかしい。よりによって「どうしようもなく」なんて。でも、あながちウソじゃない。この町がいとしく思えてならないのだ。やっぱ、いつか「水島特集 PART Ⅱ」かなあ。倉敷の滞在日数、10日間経過。