新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.64 倉敷(2)

064.jpg 23歳で編集プロダクションに就職した。編集プロダクションとは、つまり編集の下請け会社のこと。ぼくが就職した南青山の会社は、ウインドサーフィンとオートバイというふたつの異なる専門誌を丸ごと請け負う大手プロダクションだった。あの時代の働きぶりたるやすさまじかった。数日泊まり続けるなんて日常茶飯事。週に1度しか家に帰らないこともあった。スタッフはほとんど20歳代。みんな仲がよくて、戦友みたいな感覚だった。
 あの頃「晩飯ジャンケン」なるものがあった。15人ぐらいいたと思う。ふたつの編集部が一緒になってジャンケンをする。勝者が抜けていき、敗者が残って最後のひとりを決める。最後の敗者に課せられるのは、その夜の晩飯の出前の料金を全額払うというペナルティ。いつもだいたい1万円ぐらい。当時の20歳代の若者にとって1万円の痛かったこと。でも、額がデカいだけにその場の盛り上がりはハンパじゃなかった。あの頃、仕事場が最高に楽しい遊び場でもあった。痛いことも経験したけど、ホント楽しかった。
 あの時代の雰囲気を岡山のレイデックスにいて思い出した。KJのホームページ(HP)を作っている会社である。ここ2日間、HPのリニューアルで夜中は同社につめていた。スタッフは3人。社長の明石さんの下にスワキくんと藤原くん。深夜に普通に働いている感覚と、彼らの若さや勢いや親密さ、それにテーブルの上に並んだコーラやお菓子などもすべて含めて、ぼくの編集プロダクション時代と同じ空気をかもしていたのだ。
 相当に疲れていたはずなんだけど、なにより彼らは楽しんでやってくれた。その結果はこのHPのデザインやレベルの高さに現れていると思う。本誌のスタッフやコントリビューター同様、彼らも最高のクリエイターたちだ。この最高のクリエイターたちと一緒に、来週、焼肉に行くことになっているんだけど、そのときは是非「晩飯ジャンケン」を提案してみるとしよう。社長が負けてくれないかなあ。でも、藤原くん、負けそうな気がするなあ……。

 3月2日、木曜日。つい今しがた、左に「2月」と書こうとした。ついで「木曜日」と書く前に、5秒ほど考えて「水曜日」と書いた。もうヘロヘロだ。午前中に両親の昼食の用意、午後は車でぐるぐる回ってvol.2の配布、夜は朝方までHPのリニューアル。40歳を過ぎたカラダにこりゃ酷だ。HPが終わって、さすがに今晩は2時ぐらいには寝ようと思ってたんだけど、メールの返信やらなんやらで3時になってしまった。
 でも、ここ数日は幸せをかみしめることも多い。配布した先々でvol.2を見てもらって、「いいですねえ!」と喜ぶ顔をじかに見ることができるのだ。家に帰ると東京やロンドンからメールが届いている。ことごとくいい反応が返ってきている。ぼくは自分が作ったものに関して、少しでもネガティブな批評をもらうとえらく落ち込む。逆に、今回のような高い評価をいただくと、成層圏をブチ抜けるぐらいの勢いで有頂天だ。もちろん、編集長であるからして、クールを装ってそんなそぶりはまったく見せないんだけどね。倉敷の滞在日数、4日間(写真は児島のカフェ「Womb」にて。KJ vol.2の専用台を設置してくれました。店長の西原クンが水島をイメージして施した装飾に注目。同店では、4日と5日の両日にKJ vol.2発行を記念してのオリジナル・ポストカードを先着20名にプレゼントします。あ、この件、西原クンに言い忘れてた……)