昨晩、何気にテレビをつけたら『JUON』をやっていた。日本版の『呪怨』じゃなく、監督の清水崇がハリウッドに乗り込んで撮ったやつだ。ちょうど2年ぐらい前になると思う。清水崇にインタビューすることになっていたので、一番早い日程の試写に番長と行った。なかなか面白かった。いかにもハリウッドっぽい脅しが随所にあって、エンタテインメントとして楽しめた。「エンタテインメントとして楽しめた」というのは、それほどコワくなかったということだ。本当にコワい映画なら、「楽しめた」なんて余裕はかませないのだ。
ところが昨晩はまったく違った。コワいなんてもんじゃなかった。何度かモニターから目を逸らし、窓の方を向いて、窓にぼんやり映る映像を、しかも目を薄く開けて見る始末。1回見てるってのに、しかもそれほどコワくなかったのに……。「じゃあ、見なきゃいいじゃん」と思うだろう。そうだろう、そうだろう、ぼくだってそう思う。でも、どうしてチャンネルを替えられない。それがホラー映画好きの哀しいサガなのだ。
若い女性の仕事場にヤツが現れる。『リング』の貞子より数倍始末が悪いあの女。逃げ込んだマンションにまでやってきた。あちゃあ、絶対絶命。そのとき、すぐ横に置いてあった携帯電話が鳴って飛び上がった。
「今日電話くれたみたいだけど、まさか原稿の催促じゃないだろうね?」
黒住光だ。KJの映画のコラムを担当している(当HPでもコラムを更新中)。
「この時期電話するっていったら、それしかないだろう?」
黒住と話してると映画のコワさが薄まった。「助かった」とほっとひと息ついた。
「いま『JUON』を見てるんだよ」
「ハリウッド版?」
「そう。1回見てるんだけど、ひとりで見てるからか、えらくコワい」
「ああ、そりゃやっちゃいけないことだな」
実は黒住は大のホラー映画嫌いで、長い間避けて通っていた。さすがに40歳を過ぎたらもう大丈夫だろうと、数年前に『リング』を見た。その後1カ月ほど心底ブルーな時期を過ごしたという。黒住もぼくも、そのことに関しては意見が一致している。ぼくらが世の中でもっとも恐れているもの、それはほかでもない、幽霊である。40歳を過ぎてもコワいものはコワいのだ。
「やっぱ家はコワいよな」と黒住。
「マンションだってコワいぞ。それにこの『JUON』だきゃ、昼夜の区別なく出てくる」
「それ、最悪だよな」
電話を傍受されていたら、「こいつらバカか」と思われるような会話をその後もしばらく続けた。話しながら、こんなどうでもいい話を打ち切って映画に集中したいという気持ちと、こうやってバカを言いながら楽に見ていたい気持ちがせめぎあっていた。結局、10分ぐらいして電話を切った。もう楽に見れるだろうと思ったのだが、電話を切ったとたん、電話がかかってくるまでのコワさがぶりかえした。思わずこっちから黒住に電話しようかとも思ったが、あまりにもアホらしいのでやめた。
七転八倒しながら踏破した。児島にある竜王山クラスだと思ったのに、登っていたのはチョモランマだった。それだけに見終わった後は、なんともいえない爽快感が───んなわけがない。十分にコワイ思いをしましたよ、ええ。みなさんも是非体験してみてください。ちなみにこの『JUON』よりも、映画版の『呪怨』の方がコワい。ビデオ版の『呪怨』はさらにコワいです。