新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.60 倉敷(1)

060.jpg 何度ヒドい目にあわされても、また同じタイプを追いかけ続ける──。相手が女性ならそんなことはまずないんだけど、こと車に限っていうと、ぼくはどうしようもないオトコかもしれない。魔性の相手はルノー5(サンク)。買ったのは10年前だった。その最初の年だけで3回は壊れた。翌年も、そのまた次の年も壊れた。壊れるたび、10〜20万円の修理費がかかった。ブランドもののバッグをねだる女性と付き合っているみたいだった。それでもぼくは乗り続けた。惚れたオトコの弱みみたいなもんだ。
 昨年、倉敷に乗って帰ったのがよくなかったのかもしれない。途端に調子が悪くなった。挙句、オートマチックのミッションが完全にイカれてしまった。車が古いだけに交換できる部品の入手は難しく、泣く泣く廃車とあいなった。さて、次に何を買ったかおわかりだろうか。そう、ぼくはまたルノー5を買った(もちろん中古)。ぼくのわがままを聞いて購入してくれた浅田自動車の浅田クンは、ミッション以外の部品なら取り替えができるよう、なんと初代サンクをキープしておいてくれた。それなのにだ。買って半年もたたないうちに、ここだけは壊しちゃいけないミッションを壊してしまった。昨年の11月のことだ。
 ここからが車に関して「どうしようもないオトコ」の本領発揮である。浅田クンと相談して、あらたに同じ車を見つけて購入し、ミッションをすげ替えるという肝臓移植みたいな大手術に挑戦することにした。しかし、問題はドナーだ。ぼくは代車を何台も乗り継ぎながら、いつ現れるかわからないドナーをひたすら待っていた。

 2月17日、金曜日。午前11時20分品川発ののぞみで岡山へ。1カ月ぶりの岡山では、駅に到着早々に仕事が待っていた。岡山駅構内など、岡山市内に4つの書店を展開している山田快進堂の山田社長と『ポイズン』の販売の件で打ち合わせ。山田社長は販売を快諾してくれた。1週間の予定で戻ってきた今回の倉敷、なかなか順調な滑り出しだ。
 打ち合わせを終えてすぐ、マリンライナーに乗って一路児島へ。駅から歩いてまっすぐ浅田自動車に向かった。2カ月以上待ったぼくのサンクにドナーが見つかり、修理が終わったとの連絡を受けていたのだ。あった。ライトブルーのコンパクトなボディ。可愛いんだ、これが。早速、乗ってみた。ミッションは完全に直っていた。エンジンの調子は相変わらず悪くない。出だしも伸びもいたってスムーズ。まったく別人みたいだ。うんうん、かなり快適。それ以上にまたこのサンクのシートに座れることが嬉しい(座り心地が最高なんです)。辛抱して待った甲斐があったというもんだ。

 夕飯に天ぷらを作って両親と食べた後、洗い物をあっさりオトンに任せて車で岡山へ。ラッシュの渋滞も苦にならなかった。なにせ2カ月ぶりのドライブだから。岡山では鈴木タオルと『ポイズン』の校正の件で打ち合わせ。それからレイデックスに行って、KJのオリジナルTシャツとリニューアルするHPの打ち合わせ。同社を出たのは12時に近かった。
ガラガラに空いた帰りの児島線、サンクを目一杯走らせた。とてもそうは見えないけど、こいつはかなりの走り屋でもあるのだ。気持ちよかったね。これからの2週間は、KJと「ポイズン」の配送があるのであちこちへと忙しい。でも、サンクで回れるかと思うと、それもまた楽し。倉敷の滞在日数、初日終了。