新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.58 東京(8)

058.jpg 目黒区のあっせんを受けての金融機関からの融資を申し込んで1カ月が経過した。その間、目黒区役所の商工相談所へ行くこと7、8回。税務署4回、法務局3回、信用金庫3回(それに加えて、前住所の管轄だった練馬税務署にまで足を運んでいる)。さすがに商工相談所の相談員のオジさんたちとも顔見知りの間柄となった。彼らはぼくがどんなことをやってるかをだいたい理解してくれいるし、最後に行った際にKJを2冊置いていったら、「区役所内で回覧してあげるよ」とまで言ってくれた。目黒税務署では、「赤星さん、昨日も来てませんでした?」と声をかけられたことがある。名前を憶えてくれるのはありがたいんだけど、なにせ相手は税務署だからね。ぼくらみたいな人種にとっては、警察なんかよりよっぽどコワいのである。あ、確定申告の用紙をもらうの忘れてた。また税務署行かなきゃ……。

 2月8日、水曜日。午後から原宿のOMNIGODへ色校正(ためし刷り)を持って行った。このお店は明治通り沿いにあるジーンズショップで、児島のドミンゴの直営店だ。お店のスタッフが同社の広告をデザインしているので、色校正をチェックしてもらいに行ったわけだ。ところが、担当のスタッフが大阪に出張していて、戻りは数日後になるという。すぐに児島本社の三谷氏に電話した。するとあっさり、「もう赤星さんに任せますわ」。いやあ、素晴らしい! 広告の校正を「任せる」と言われるだけの信頼を得ているぼくもエラいが、このおおらかさには涙が出るね。東京で広告なんか携わろうもんなら、クライアントの理不尽な注文に日々ズタズタにされて悔し涙を流すのが常なのに。

 原宿から表参道の交差点に向かう途中、通りの先でやけに人が多いのに気づいた。ちょうど同潤会アパートがあったあたり。そうだ、表参道ヒルズだ。風情のある同潤会アパートの建物をぶち壊して建てた、いま東京でもっとも話題のスポット。今日あたり、そろそろオープンなのかもしれない。建物は思ったよりはるかに小さかった。マンションにして5階建てぐらいの高さの平たいビルが、表参道の通りに沿って長く続く。どうやら上の階の2フロアぐらいは住居になってるようだ。安藤忠雄の設計らしく、建物自体はえらくシンプルでシックだった。六本木ヒルズとは、規模もテイストもえらく違う。
 ちょっと入ってみようかと思ったが、メインのエントランスの前で、黒スーツ姿のスタッフが声をはりあげていた。「今日は招待状がある方のみの入場となります!」。なるほどエントランスあたりはVIP感がいっぱいだ。フードの縁に毛皮のついたジャンバー&ジーンズ姿のぼくなど到底太刀打ちでない。でも、全然悔しくないね。この手の場所にはそんなに興味があるわけじゃないのだ。

 夕方からKJの色校正の半分以上を校了した───わかりやすく書くと、「夕方からKJの全ページの半分以上を完璧な状態に修正して、印刷所に『あとは頼む!』と手放した」。あとは明日に残りのページの色校正を受け取り、それを校了すれば制作関連はすべておしまい。2月末に雑誌が上がるのを待つだけの身軽な身となる。やっぱ長かったなあ。
 さて、いよいよKJ次号の完成図を完璧に描けるようになった。その出来ばえはというと、大抵の方からお褒めの言葉をいただいた創刊号とはうって変わって、賛否両論になるかと思う。でも、俎上にも上せられない雑誌が大半のなか、世に出る価値があるものが出来上がったという実感はある。いやあ、楽しみだなあ。乞うご期待ね! 東京の滞在日数、24日間経過。