新・不定点観測

赤星豊

vol.52 Everybody, tune in!

 今日は朝10時半に、倉敷のロイヤルホストでティムと待ち合わせていた。ティム・キャロア(Tim Calore)、ボストン出身のアメリカ人。現在、岡山市在住。彼に『レディオ・クラッシュジャパン』のオープニングのタイトルコールをお願いしてあった。タイトルコールとは番組の幕開けを告げる第一声。「レディオ・クラッシュジャパーン! プリゼンティッド・バーイ……」というゆうやつ。
 ティムには20秒の番組宣伝も録音してもらうことにした。「録音してもらうことにした」って、昨晩ぼくが勝手に決めたのだ。で、ロイヤルホストでドリンクバーを注文した後、そのことを告げた。「いいよ、問題ないよ」と快諾を得たので、11時からの録音までの約30分間、文章読みの特訓に入った。ティムは9年も日本にいるだけあって、日本語も達者。読み書きだってできる。だから、なんなくこなせると思っていた。ところが、これが思っていたほどスムースにいかない。「クラッシュ・ジャパンなら/ではのクールな音楽をセレクト」と妙なところで区切ってしまうし、「毎回多彩なゲストを迎えてお送りする贅沢な30分」のくだりは危なっかしいことこのうえない。そこで文章を平易にし、削れるところは削って極限までスリム化した。それでも30秒はかかった。
「こうした方が早いね」
 そう言って、ティムはすべての文章をローマ字で書いた。再読して時間を計ってみる。25秒。なんとかいけるかな。若干の不安を残しつつ、ふたりでFMくらしきに向かった。それにしても、このいきあたりばったり感がなんともKJらしいじゃないですか。 

 制作の前澤さんがミキサールームでGOサインを出した。タイトルコールのレコーディング。いよいよだ。ティムが真剣な表情で「レディオ・クラッシュジャパーン!」。何回か言い方を変えて録音した。前澤さんが実際にその声を使って、その場でオープニングを作ってくれた。タイトル曲はもちろんThe Clashの『ロンドン・コーリング』だ。部屋のスピーカーからあのシャウトするギターのイントロが流れ始める。ベースの音がギターにかぶさる。そしてそこにティムの声がかぶさった。「レディオ・クラッシュジャパーン!」。おお! いいね、いいね、なんかそれっぽいね。これぞぼくのイメージにピッタリだ! ティムの起用は大正解だった。ティムもイントロの続きを聞きながら「いいよ、これ」と納得顔。こうしてタイトルコールの録音はものの数分で終わったのだった。
 お次は問題の番組宣伝。前澤さんがOKを出す。ティムはわずかに緊張している。ワンテイク目。「倉敷のフリーマガジン『Krash japan』がラジオに───放送は毎月第一日曜日午後10時30分から。Everybody, tune in!」。やった! 練習のときとはうって変わってまったく滞りがない。時間は? 前澤さんが「今ので20秒です」。あの30分の特訓はムダじゃなかった。「もうワンテイクとります。今度はもう少し短くできればいいんですが」。ツーテイク目。今度もティムはつまらなかった。「今ので19秒です」と前澤さん。「じゃあこれに曲をかぶせて聞いてみましょう」と言って、実際の番宣CMさながらでスピーカーから流してくれた。うむ、悪くない。『ロンドン・コーリング』のイントロにのせて、ティムが「Everybody, tune in !」。悪くないどころか、かなりイケてる。文章を削りすぎたのか、番組の内容がいまひとつよくわからないけど、これを耳にしたら番組を聞いてみたくなるような、そんなカッコいい番宣CMができあがった。
 ティム、ありがとう! 今年は松坂もいるからレッドソックスを応援するよ。それから奥さんに伝えておいてくれ。カレーライス、おいしかったと(今日、お土産で奥さんの手作りのカレーライスをもらったのです)。