新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.51 東京(1)

051.jpg この数日で、krashjapan vol.2の進行が加速している。ファッションの写真のプリントがロンドンにいるkoomiから送られてきた。長島有里枝さんには写真のセレクトを伝え、プリントをお願いした。小林エリカさんからはメチャクチャかわいいマンガの原画をもらった。4ページのレイアウトを依頼しているロンドンのペドロからpdfでラフが送られてきた。そしてなんと、黒住光からも原稿が来た。いよいよ佳境、ぼくもそろそろギアをトップに入れなきゃいけない。でも、その前にちょっとやらねばならぬことがある。

 1月20日、木曜日。朝からマキちゃんと川崎大師へ行った。平日の昼間にデートなんかしてる場合じゃないのは分かってる。でも、これにはちゃんとした理由がある。
 数えで42歳の一昨年、ぼくは本厄を迎えた。元来、厄とかその手のことを気にする性格じゃないから、年が明けても厄のことなんか考えなかった。でも、その年のお正月、ぼくは東京でヒマをもてあましていた。あまりにヒマで、ふと思い浮かんだのが厄払いだった。「どんなもんか、ためしに行ったるか」てな軽い気持ちで、門前仲町までわざわざ電車で行って、富岡八幡宮で厄払いをしてもらった。
 そのとき厄払いのお札をもらった。本厄を終えて後厄となった昨年、その札を富岡八幡宮に返さなければいけなかった。お札を見るたび「行かなきゃ」とは思うのだ。でも、ご利益があったのかなかったのか分からないこのお札を返すために、電車に乗って出かけるというのがたまらなく億劫だった。こうして、気にはしながらも見ないふりをして1年。後厄を終えようとする今もそのお札が部屋にあった。もらったその日に置いた、冷蔵庫の上にそのまま───と、そんな話を先日、マキちゃんとご飯を食べていたときにしたら、なんと彼女もまったく同じ状況だと言った(女性の本厄は数えで33歳)。違うのは、彼女が川崎大師で厄払いをしてもらったことだけ。
「じゃあ一緒にお札を返しに行きましょう!」
 なぜかマキちゃん、テンションが高い。ひとりだと億劫だが、ふたりだとモチベーションが上がると彼女は言った。彼女のテンションの高さにつられてか、ぼくもお札を返すことでこれからの人生がすべてうまくいくように思えてきた。こうして、ふたりが互いに厄払いのお札の返却についていくという、妙ちくりんなデートにあいなったわけだ。

 川崎大師でマキちゃんのお札を返却し、一路、門前仲町に向かう。マキちゃんは「いやあ、すっきりしました」と表情は晴れやかだ。午後3時、富岡八幡宮に到着。2年前に厄払いを受けた白いテントがそのまま境内にあった。時間が止まってるようだった。お札の返却所は境内のはずれにあった。小さな小屋に窓口があって、返却されたお札が無造作に並べられている。人は誰もいない。川崎大師はお札をあずかる人が専任で2人もいたのに。無人のそこにお札を置いて、本堂で参拝してから富岡八幡宮を後にした。
 気分はというと、なんてことはない。どんよりもしないけど、スッキリもしない。こんなのでぼくの運気はこれから上向きになるんだろうか……。いや、上向きになるに違いない。というか、もう実際にかなり上向いている。その証拠に、あの、締め切りをなんとも思わない黒住から原稿が来たのだから。東京の滞在日数、4日間経過。