昨日はすっかりダウンしていた。自分のカラダに穴が開いたというより、穴そのものになって、実態がなく、ゆらゆらと浮かんでいるような。今日は午後1時に目がさめた。社会人にあるまじき行動ではあるが、それから歯を磨いて、シャワーを浴びたら、自分が少しはマシになっているんじゃないかと感じることができた。まだまだ気持ちを整理するにはいたってないけど、みなさん、もうぼくは大丈夫のようです。心配をかけて申し訳ない。励ましのメールをいただいた方々、どうもありがとう。深謝です。
さて、ポーランドのことを書かなきゃ。そう、ポーランドだ、ポーランド。えっと、何から書いたらいいかな。遊びに行ったわけじゃないから、仕事のことについて書いたらいいのかな。結果から言うと、撮影はなんとか無事終わりました。撮影日は18日の日曜日。それまで毎日夕方になるとフォトグラファーのマチェイのスタジオ兼自宅に行って、スタイリストのナターリアと3人でミーティングをやった。彼らはスゴくやる気になってくれていて、日に日に期待は高まった。
そして撮影当日。場所はヴロツワヴ駅近くにあるビール工場跡。ロケーションは最高だ。レンガ造りの古い建物で、現在は貸しイベントスペースになっている。ときどき映画を上映したり、演劇をやったりしているみたいで、映画館にあるベンチチェアの古いやつが壁に沿って並べてあった。撮影スタッフはなんと総勢10人。マチェイのアシスタントが男女1名ずつ。モデル3名、ヘアメイク1名、スタイリストのナターリアに、なぜかマチェイのお母さんのハンナまで。ぼく以外はすべてポーランド人だ。彼らが話す言葉もすべてポーランド語。もちろん、ぼくは彼らが何をしゃべっているのかさっぱりわからない。
前述のような場に日本人のぼくがひとりいると、きっと疎外感を味わったと思うだろう。ロケ場所の端っこに坐って詰め将棋の本でも読んでいたのではと思うかもしれない。ところが違うのだ。その場では、自分が日本人である意識なんてまったくない。彼らと人種が違うという意識もなかった。そんな突飛な場にいて、まったく違和感がなかったのだ。
目的はみんな理解していた。とくにマチェイとナターリアに限っては、ぼくの意思や志向はほぼ完全に把握してもらっていた(彼らとは英語で会話をしてました)。そして、みんながいいモノを作ろうという意識をもっていた。つまりそういうこと。コミュニケーションがとれたうえで同じ目的をもって進むのに、人種なんて関係ないのだ。そこでは人種は概念にすぎない───なんて言いながら、実は少しだけ違和感を感じたときがあった。マチェイとナターリアとモデル3人とその場で立ったまま意見を交わしたときのこと。構図でいうと、モデル3人と、マチェイ、ナターリア、ぼくの3人が至近距離で向かい合う感じだ。マチェイは186センチ、ナターリアも180センチあって、しかもブーツを履いていた。モデルのカタリーナも180センチ、ポーリーナにいたっては182センチある。かろうじてアグニェシュカが176センチだったが、そのときはヒールを履いていた。この巨人軍団の熱い会話が170センチのぼくの頭上を行き交う。ぼくは写真の構図をどうするかを腕組みして考えながら、はたしてぼくはこの場で彼らの視界に入っているんだろうかという不安に駆られていた。うーん、やっぱり日本人だったな、オレは。