新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.45 倉敷(3)

045.jpg 久しぶりにテッちゃんから電話があった。前田哲、東京で活躍している映画監督だ。ここ6、7年ほど、インディーズ系の低予算映画ばっかり撮ってきたが、今年初めて大きなバジェットの映画を監督した。主演は佐藤浩一、大沢たかお、鈴木京香。タイトルはなんてったっけ、忘れてしまった。来年のGWあたり公開になるらしい。
 テッちゃんとは共通の友人がいた。名前をトクオという。グラフィックのデザイナーで、20代半ばに大阪で知り合った。かなり変わった男でその風変わりさが大好きだったけど、風変わりすぎて距離を置いたこともあった。ある時期、このテッちゃんとトクオはふたりで詩の会を作って詩を交換していた。でも、いつもケンカみたいになるとかで、もう一人の共通の友人キリンと無理矢理入会させられたことがある。詩なんて書いたことないから期日に遅れる。するとトクオから催促の電話がかかる。夜中に無理してひねり出した詩をファックスで送ると、「夜中にファックスせんといてや」とおしかりの電話がかかってくる。トクオは気に入った仕事しかしないからいつもお金がない。だからご飯を食べに行くとだいたいぼくのおごりになるわけだが、食べ終わった後に「あの店はまずいな」と平気な顔でいう。それでもよく一緒にいた。ぼくの仕事場にもしょっちゅうやって来てた。

 トクオが死んだのはちょうど5年前、2000年の12月だった。昨日の電話でテッちゃんが話した内容はこうだった。先日、パーティに行った。その場には偶然キリンもいたらしい。そして、そこでたまたま霊感が強いという人と会った。その人がテッちゃんにこう言ったという。「ここにあなたの友達が来ていますね」。その人はテッちゃんのことをまったく知らない人だった。
 トクオはパーティみたいな集まりが好きだった。それに、テッちゃんとキリンが偶然一緒になる場所なんてそれほどない。あまりに条件が揃ってるので、もしかしたら本当にトクオがその場にいたのかもしれない。「怖いか?」と聞くと、テッちゃんは「怖くないよ」と言った。ぼくもそうだ。もしもトクオがときどきぼくたちのそばにいて、ぼくたちのことを見ていたとしても怖いことなんかない。正直言うと、結構嬉しかったりする。さすがにいつも見られてたら鬱陶しくてイヤだけどね。
 そんなことがあって、トクオが今のぼくを見たらどう感じるだろうと、ふと思った。これはなかなか予測がつかない。「大変やなあ」と言うかもしれないし、「何バカやってるんよ」と言うかもしれない。でも、KJを見たら、いつもの見下したような言い方でこう言うにきまってる。「たいしたことないな」。トクオって男は、まあそういうヤツなのだ。死んでも性格は変わってないだろう。

 12月31日、土曜日。オトンが階段を上ってくる足音で目が覚めた。ぼくが寝ているときにオトンが2階に上がってくるなんてまずない。何かあったに違いない、何かよくないことが。部屋の引き戸がさっと開いた。
「ユタカよ」
「どしたん?」
「生きとったんか?」
「はっ?」
「オカンが、おまえが死んどるから見て来いゆうて」
 何がなんやらさっぱり分からなかった。
「もう1時半で」
 全部が理解できた、一瞬で。ここ2、3日、ほとんど寝てなかった。布団に入っても眠れないのだ。一昨日の夜は布団にも入らず、当然一睡もしてなかった。そのおつりが今日やってきたというわけだ。というわけで、ぼくの大晦日は午前がナシ。昨日の残り物のお好み焼きを温めて食べ、お風呂に入って歯を磨き終わった頃には、陽は夕方になっていた。
 今日はお餅を買いに行って、帰ってから自分の部屋の大掃除をし、おせち用の黒豆を炊いた。夕飯はお向かいの高田さんが豪華なバラ寿司をもってきてくれた。夕食後は雑煮の出汁を作り、貝柱(タイラギ貝)を煮て、ひとりで「PRIDE男祭り」を見た。それからこの原稿を書いてるうちに、なんと年が明けた。鷲羽山ハイランドから上がった花火が部屋から見えた。今年もひとり寂しく年を越したみたいだ。今年はやっと後厄が終わる(節分までと聞いてます)。きっといいことがたくさんあるだろう。
 この「krash column」を読んでいただいているみなさん、あけましておめでとうございます。今年も頑張って各地の役立ち情報をお伝えしていきます。倉敷の滞在日数、5日間経過(写真は以前登場して大好評だった下津井のゴンちゃんです)。