新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.43 倉敷(1)

043.jpg 12月28日、水曜日。えらく寒いよ、倉敷は。倉敷だけがこんなに寒いのか、日本が全国的に冷えてるのか。とにかくこの寒さは尋常じゃない。夜、実家の2階で原稿を書いてると、文字通り、底冷えする。足なんか氷のようだ。寝るときは足が冷えすぎてなかなか寝つけない。1階の洗面所のシンクにお湯をためて、足を浸けて温めるという手はある。でも、洗面所もお風呂もオカンが寝ている部屋に近く、起こすとえらいことになるから洗面所に行けない。
 というわけで、思い立ったのが湯たんぽである。幸い、部屋にある灯油ストーブでお湯を沸かすことができる。早速、ホームセンターに湯たんぽを買いに行った。「そんなもん、今もあるんかいな」と思いながら棚を回ってると、これがあったのだ。ブリキの質感むき出しの昔ながらのデザイン、見るからに湯たんぽなルックスの湯たんぽが。そこはぼくみたいな「寒くてたまらん」人たちが駆け込むコーナーのようで、電気毛布やら電気カーペット、コタツのヒーターなんかも無造作に置いてある。そして、湯たんぽの棚のすぐ下の段にそれがあった。その段のコーナー名はズバリ「電気あんか」。
 いやあ、久しぶりに耳にしたね、電気あんか。そういえば、昔家にあった。丸っこいアールのついた木製の箱のなかにヒーターが入ってるやつ(そういえば、「パンドラの箱」っていうと、いつもあの箱のことを思いだしてたっけ)。今のデザインはさすがに木製じゃなく、足の裏マッサージ機みたいなデザインに変わってた。でも、これがえもいわれずダサいのだ。足を置くところに張った布がピンク、温度調節のつまみもピンク、コードのゴムまでピンク一色。しかも、コードはビビッドなピンクなのに、布のピンクはにごってどよんとしている。なぜにここまでピンクなのか、逆に興味はあるが。

 湯たんぽと電気あんか。楽なのは絶対的に電気あんかだ。コードをコンセントに入れさえすりゃいい(しかも960円と超破格!)。一方の湯たんぽはストーブで沸かしたお湯をいれ、水を入れて温度を調整し、さらに専用カバーかタオルに巻いて使わなきゃいけない。これ、結構大変だ。でも、いかにも「暖をとる」という感じで、その作業には情緒もある。デザインにもたっぷり味わいがあるし。蟲文庫の田中さんなんか、もしかしたら湯たんぽを使ってるかもしれないね。
 で、どっちを選んだか。2、3分ほどあれやこれやと考えて、結局、電気あんかを選んだ。今まさに、KJ編集長はそのピンクの塊の上に両の足をのせ、この原稿を書いているのである。やっぱり浮いてる。浮きまくってる。でも、浮いてるからといって不快でもない。よく商品のデザインを見て、「許せない!」とか言う人がいるけど、ぼくはデザインの許容量が意外と大きい。身の回りに置くものでも簡単に許してしまう(デザインを見て「許す」という表現もどうかと思うが……)。もちろん、デザインが生活にいかに大切かは分かってるつもりだ。でも、ソファとかテーブルとかじゃなく、これは電気あんかなわけだし。  電気あんかとデザイン。このテーマ、結構深いかもしれない───なんていって、今後考えることがあるとは思えないけどね。写真は一緒に買ったムートンもどきのスリッパと一緒に。このスリッパのベージュと合わせたら、ピンクもちょっとアリかも、と無理矢理。倉敷の滞在日数、2日間。