新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.36 東京(2)

036.jpg Vol.15で市ヶ谷から中目黒まで夜中に歩いた話を書いた。読み返してみて、ちょっとあきれた。こりゃいくらなんでも歩きすぎだ。歩いた本人から見ても正気の沙汰とは思えない。でも、東京にいると、倉敷にいるよりも歩く距離がはるかに多いのも事実だ。たとえば中目黒にあるうちから渋谷のパルコまでを往復したとする。中目黒から渋谷までは東急線を使うが、それでも1kmぐらいは歩いていると思う。逆に倉敷の生活は明らかに歩かなさすぎ。どこへ行くにも車を使うから。歩いて5分の距離にあるセブンイレブンにでさえ、ついつい車を出してしまう。田舎暮らしの方がカラダがなまるこのご時世、それもちょっと皮肉な感じがするね。

 12月13日、火曜日。渋谷の「Traveling Gas Shop」へKJをもっていく。ショップを運営する「Gas As Interface」(0)の菊地さんから、店内にKJを置きたいとのメールをもらっていたのだ。同社は国内外のアーティストの商品企画や出版を行っていて、最近ではアンダーカバーの高橋盾のアーティストブックを作ったり、TOMATOのワークショップを開催したりしている。明治通り沿いの真新しいビルの2階にあるショップは、えらくおしゃれな感じだった。海外のアーティストたちの本やTシャツ、グッズが店内にズラリ。こんなお店にKJを置いてくれるなんて嬉しいですよ。
 渋谷から表参道まで歩いて、KJのアートディレクションを担当しているニシハラくんのオフィスへ。先々週に倉敷で撮影した染ちゃんの写真のプリントが宅急便で届いていた。今号、初の写真とのご対面。編集者としては楽しみな瞬間のひとつだ。なかなかよかった。今回、染ちゃんに担当してもらったのは全部で13ページ。全体の5分の1程度ではあるが、早くも今号への十分な手ごたえを感じた次第だ。

 それから友達の嘉村真由美さんのオフィス「ビルディング」に寄ってしばらく歓談。彼女とは2年前に『BRUTUS』の仕事で一緒にスイスに行って以来の付き合いだ。といっても、スイスではぶつかりまくってた。朝、寝てるところを電話で起こされ、「あのさ、お湯が出ないんだけど」とか平気でのたまう(「そんなのホテルに言わんかい!」と電話を切らせてもらいました)。彼女が一足先に帰国する前夜には、「このドレス、お店に返しておいてほしいんだけど」と、背中がバックリ開いたイブニングドレスをもたされたりもした。このわたくしを小間使い扱いである。「もう二度と会いとうないわい」と思ってたのに、でも、それがなぜか今では結構な仲良しだ。人との付き合いって不思議なもんだ、ホント。
 表参道からまた渋谷に戻り、東急ハンズへ行った。ここの2階にあるトラベルコーナーはぼくのお気に入り。今日も20分ほど見て回って、メッシュの巾着袋を2枚買った。よく考えるとそんなもの全然必要じゃない。だいたい、メッシュの巾着袋のメリットが何かもよくわかってない。中身が見えるって、そんなの自分で入れてりゃ分かるんじゃないか?
 その後、歩いて並木橋近くのギャラリーへ。写真家の山田脩二さんの個展のレセプションパーティに顔を出す。この山田さん、写真家として活動した後、瓦に魅せられ、瓦を使ったアートを発表しているというちょっと変わったお人だ。写真はすべてモノクロで、60年代に撮った渋谷の写真がメチャクチャかっこよかった(映画の『仁義の墓場』を思い出しました)。
 それから歩いて恵比寿のメガネ屋さんに寄り、これまた歩いて中目黒に帰った。今日1日で歩いた距離はたぶん6kmぐらい。倉敷だと1週間分の距離かもしれない。家に帰ると、なんか腿のあたりがプルプルしてたし。東京の滞在日数、2日間経過。