携帯電話を忘れてきてしまった。不安とまではいかないけど、パンツをはかずに外に出てしまったみたいな、妙にスースーした感じがする。思えば携帯電話を初めて買ったのが2年前。それまで頑なまでに携帯電話を拒否し続けていた。仕事関係の人たちからはずっとうるさく言われていた。「連絡がつかない」と。そんなことはないのだ。ちゃんとうちには電話もファックスもメールもある。長く外に出るときは留守電を外からチェックしていたし。「医者や新聞記者じゃあるまいし、1分1秒を争うような仕事はしていない」というのがぼくの言い分。「携帯がなきゃ仕事ができないと思う人とは仕事をしない」とまで言ってつっぱっていた。
きっかけはオカンの入院だった。東京とのやりとりと、家族とのやりとりにどうしても必要だったのだ。初めて携帯電話を手にしたときは嬉しさなぞ微塵もなく、同じ携帯を持たない派の番長に「ついに買っちゃったんですね」とかすかに蔑みの目を向けられたときは、正直落ちた。魂を売ったぐらいの気持ちになった。それがいまや、10年ぐらい使い続けていたかのように携帯電話を使いこなしている(といっても通話だけです)。今日のように、忘れて出かけるとスースーしたりもする。番長、どうやらおれは魂だけでなく、カラダまで売ってしまったようだよ。
今日は髪を切りに行った。児島で髪を切るのは初めてのこと。さて、どこに行ったものかと、味野の七番街にある婦人服のお店「MOTOYA」に相談に行った。すると、お店の福本さんとカドワキさんが声をそろえて「じゃあ、あそこね」と田の口にある美容院を紹介された。すぐに電話してくれて、30分後にそこに行くことに。車を飛ばして行きました。
時刻は朝の11時30分。東京で通ってた中目黒のウラくんのところなら、まだ開店もしていない時間である。店に入ると、あらま、お客はいっぱいだ。4人の席がすべてうまっている。奥から85歳のおばあちゃん、70歳のおばちゃん、60歳のおばちゃん、30歳のおねえさん(年齢はすべて推定です)。「どうもお邪魔しました」とくるりと背を向けたくなったが、「ああ、お電話の方ですね、どうぞ」と待合のソファに案内された。店に入ったからには、もう言うなりだ。観念してソファに座り、そばにあった『女性自身』を手にとった。
髪を切ってくれたのは、ぼくと同世代の男性。彼がこのお店のオーナーのようである。いきなりぼくの頭を見て、「モヒカンいきますか?」と。もちろん冗談だと思って、「それもいいね」と返したんだけど、途中で、それが本当に冗談だったのかどうか不安になり、「あの、地味な頭でお願いします」と言い訳するように言った。
ひととおり髪を切り終わると、「髪と頭皮のエステみたいなもんです」と頭に液体をたっぷり塗られ、その上からサランラップをぐるぐる巻かれた。それからたいそうな機械をゴロゴロ転がしてきて、ぼくの座ってる席を三方から囲むようにした───鏡を見る。なんだこれは? もうこの図はどう表現していいかわからない。さらに戸惑いまくってるぼくのところに、お盆にのせた抹茶とようかんが出てきた。お盆を膝にのせたまま、ふたたび鏡を見る───地球のみなさん、さようならだ。
いやあ、児島の美容院はどうなってるの? 面白すぎるよ、ホント。今度から毎回違う美容院に行ってみよう。またひとつ児島ライフに新しい楽しみができましたな。