新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.32 倉敷(6)

032.jpg 12月5日、月曜日。先週の金曜日に、中学の同級生でギブソンのギターをもってるタッちゃんにこんなことを頼まれた。ビートルズの『Let it be』の英語の歌詞に、カタカナでふりがなをうってほしいと。「レット・イット・ビー♪じゃのうて、レ・ロ・ビー♪ゆうて歌うじゃろ? 全部その通りに書いてほしいんじゃ」。タッちゃんはギターで『Let it be』を弾きながら歌ってみたいのだ。そりゃ手伝ってやりますがな。今度、是非聴いてみたいからね。でも、この作業が意外と難しかった。たとえば、「broken hearted people」は「ブロークン・ハーレッ・ピープー」と書いたのだが、「hearted」を「ハーレッ」と書きながらものすごい違和感を感じる。しかもおまけに「ピープー」だ。でも、「ハーティッド・ピープル」としたら、タッちゃんの要望である「レロビー」的な歌い方に反する。「こりゃまいったね」と一進後退しながらウジウジやってると、携帯電話が鳴った。「Flag Staff」の小田クンからだ。2週間ほど前にUFOを目撃した彼である。「お疲れ様です」と普通に挨拶を交わした後、彼は言った。「今ね、UFOが見えてるんですよ」。

 「月の位置から45度右下」に今見えているという。脱兎のごとくベランダに出てみると、三ケ月が夜の空にくっきり。その斜め下、たしかに金色に光る物体がある。飛行機なら赤い光が点滅しているはずだが、その物体は点滅せず、金色の光を放ち続けている。こりゃえらいことだ。すぐに、染ちゃんの撮影に使った三脚をもってきてベランダにすえ、台座に携帯ほどの小さなデジカメを取り付けた。でも、これがなかなか思うようにポジショニングできない。三脚なんかほとんど使ったことがないし、ベランダが狭くて脚が思うように置けないのだ。いつふっと消えるか分からないので大慌てだし、しかも今晩は極寒で突風まで吹いている。撮影環境は最悪だ。
 やっとの思いでセッティングを終え、デジカメを最長ズームの6倍にしてモニターを見た。まだ、その光はあった。それからも数分見てたけど、移動するでもなく、最初に見たそのままの位置にある。ちょっと動かなさすぎじゃないか? ぼくのイメージのUFOとはかなり違うんだけど。
「あれさ、星じゃないの?」
「星にしたら光が大きいでしょ? それに光の下に脚が2本見えませんか?」
 そんなの全然見えなかった。小田クン、どんな目してるのよ?
「わかったよ。じゃあ明日同じ時間に見てみようよ」
「いや、昨日も一昨日も同じ時間に見てましたけど、なかったですよ」
 おいおい、毎日観測してるんかい?
 それから数分して、その光は徐々に、月の動きに近いほどに緩慢に、下方に移動して隣の家の影に消えてしまった。はたしてあれはUFOだったんだろうか? たとえUFOだったとしても、すごく消化不良な感じだ。もっと不規則に動くとか、瞬間移動するとか、空の半分ぐらいがカッと明るくなるとか、そんなのが来てほしかった。理想はやっぱり昼間だね。葉巻型とか、円盤の下の面に球体が3つぐらいくっついてるやつとか、是非そんなの見てみたい。明日、小田クンにぼくの見たいUFOのタイプを正確に伝えておくことにしよう。倉敷の滞在日数、12日間経過。