12月3日、土曜日。昨日に引き続き、「krash people」の撮影。このコーナーは倉敷在住のいろんな人たちに、倉敷での暮らしぶりや倉敷に対する思いを語ってもらうもので、創刊号は6人が登場し、次号は5人を予定している。
今日の撮影は、今年11月、王子ヶ岳にオープンした和食旅館「秋月庵」で広報・宣伝を担当している岡田六輔クン。彼は児島・下の町在住で、中学2年のときから5年間カナダのバンクーバーに留学していた。彼いわく、実は留学したかったのはお母さんで、「『あんたも来る?』といった感じ」だったそうだ。帰国後、地元の児島高校を卒業し、広島で映像制作の勉強をした後、現在の職に就いた。彼は近いうちに、児島を舞台にした映画を自主制作で撮る予定だという。
「秋月庵」を経営しているのは、水島の運送会社「黄帽」代表の山本洋子さん。撮影時に岡田クンから紹介してもらった。この洋子さん、えらく個性の強いお人だった。撮影の合間に、玄関のすぐ外の階段に腰をおろしてコーヒーを飲んでいると、突然現れて、「ハイ、これ」と、有無も言わさずぼくとカメラマンのイシイくんに1枚ずつコピー用紙を渡した。そこには詩のようなものが書いてあった。同量の文章の段落の頭に1から3まで数字をふってある。「これね、<秋月庵>の歌なんです。私が作詞・作曲したの。今度CDにしようかと思ってるのよ」。満面の笑みでそう言うなり、洋子さんはぼくたちの前で歌い始めた。「生き方に理屈はいらない、ただただ素直な気持ちと感謝の心でいい、いたってシンプルなもの〜♪」。間髪入れず、二番目を歌い始めた。隣を見るとイシイくんは神妙な面持ちで、うつむき加減で聴いている。先生に怒られてる生徒みたいな感じだ。さすがに岡田クンは照れ笑いでも浮かべてるかと思うと、これまたいたってまじめな顔で聴いている。これじゃひとり笑ってたぼくがヒドいヤツみたいだ。洋子さんは三番に突入、「そんなふとした気づきをあなたと感じる、希望といやしの空間♪」、最後まで歌いきった。一同黙って拍手である(どう見ても変な図だ)。洋子さんはぼくたちの拍手を受けて気持ちよさそうだった。いやあ、スゴい人がいるもんだね、ホント。
洋子さんはぼくとイシイくんに彼女の著書を渡して去っていった。タイトルは『いのちを運ぶ黄色い帽子』と『ガンて素敵ないのちの親友』。帰ってちょっと読んでみた。洋子さんは1945年熊本生まれ。85年に末期卵巣がん摘出手術と同時に娘さんを出産。92年に水島で「黄帽」を設立し、その3年後には脳腫瘍を患った。2度とも生死に関わる深刻な病気で、しかもその間に2度の離婚まで経験し、現在にいたっている(今も放射線治療で麻痺などの後遺症があるらしい)。でも、長い闘病生活を乗り越えて、洋子さんは「生」を実感しているとあった。耐えがたい痛みにも「生きていることを実感させてくれる」と感謝していたという。ポジティブシンキングどころの話じゃないね。彼女は超越してる。そりゃ、歌も三番まで歌いたくなるわけだ。生きてることの素晴らしさ、みたいな話はメチャクチャ苦手なんだけど、洋子さんとは今度ゆっくり話してみたい。あ、「秋月庵」、結構いい感じのところでした。場所は王子ケ岳の国民宿舎のすぐそば。瀬戸内海の夕景が素晴らしいです。倉敷の滞在日数、10日間経過。