新・不定点観測

赤星豊

vol.29 宴のあと

昨晩、イチローが高松からやってきた。もちろん鈴木イチローじゃない、山口イチロー。『ダカーポ』という雑誌で一緒に仕事をしていたイラストレーターだ。イチローは1週間ぐらいの予定で高松に遊びに行ったらしい。それが今年の4月のこと。「1週間の予定が、半年もいちゃいました」。その間、タダで貸してくれたという倉庫に住みこみ、地元でできた友達と毎夜遊びながら、またうどんを食べ歩きながら、アート制作に励んでいた。なんとも浮世離れしたお人である。かくいうぼくも、2年前まではまったくの同類だった。それがいまや倉敷に根をはり、雑誌の編集長という肩書きを背負い、地元でイベントを開催したりなんかもする。しかし、イチローが羨ましいかというと、いまはまったくそう感じない。まあ、まだ「根をはる」まで至っているとは言いがたいんだけど。

 日曜日のイベントは大盛況でした。出店は全部で15ブース。お客さんの全身を大判の用紙に描くヒロナカ・カオルさんのブースは行列が絶えず、似顔絵を紙袋に描いてそれをお客さんにかぶらせて写真に撮るファイブ・グラフィックスも好評だった。飲食も盛況で、レイデックスのチーズフォンデュは途中で材料が足らなくなって買い足しに行ってたぐらいだし、サークルのカレーは100食を早い段階で売り切っていた。いまひとつ伸び悩んでいたのが、我がKJブース。Tシャツのオーダーは結局1枚も入らなかった。でも、バックナンバーが相当数売れた。売り上げはピッタリ2万円ナリ。どんなもんじゃ(報告:税理士のシマヅさん、今回もまた結構な赤字を出してしまいました)。

 パフォーマンスも、ふたを開けてみれば盛りだくさんだった。まずはぼくの甥っ子、リョウが初のDJデビューを果たした(サポートしてくれたDJの末永さん、ワタナベさん、ありがとうね)。ACUTEこと中田一平クンは、舞台装飾家でアーティストのSEIKOUさんと、なんとも素敵なライブペインティングを見せてくれた。それからセネガルのマムドゥ・ジャバテさん。彼のジェンベ(アフリカの太鼓)はスゴかったね。「なんでこんなにスゴい人がここでやってるの?」って思ってしまうぐらい感動モンのパフォーマンスを披露してくれた。我がバンド「Clips」も頑張ったね。水曜日に結成して、金曜日にバンド名を決めたとは思えないような歌と演奏を披露することができた。「児島のビョーク」ことエリちゃんのボーカルはさえまくってたし、オオタくんの泣きのギターもよかった(ぼくは彼を見ると笑ってしまうので絶対に彼の方を見なかった)。ぼくはサイドギターを担当し、『The Whole Point of No Return』(スタイル・カウンシル)では歌声も聞かせてやった。多くのお客さんから、「面白かったよ!」と声をかけてくれた。そのたびに「ありがとう!」と笑顔で返していたんだけど、バンドの演奏の感想として「面白かったよ!」というのはいかがなものか。

 300〜400人ぐらいは来てくれたと思う。関係者も50人以上はいたんじゃないかな。2年前に倉敷に帰ってきたとき、この日来てくれた人たちのなかに知り合いは5人もいなかった。我ながら、よくこれだけたくさんの人たちに出会えたと思う。しかも、彼らのほとんどがKJを、ぼくのやってることを応援してくれている。ぼくがやってることは正しいと思わせてくれる。
 vol.10まであと7冊。やるよ、オレは。