新・不定点観測

赤星豊

vol.26 オイラのバカ

 40歳も過ぎると記憶がやられる。だいたいにおいてそうだ。ぼくのスペシャリティだったはずの映画に関しても、いまや使い物にならない状態である。「あれだよあれ、あの役者、なんつったっけ。あの映画に出てた、ほら、あの有名な映画」。こうして、延々と「あれ」「あの」を繰り返すことがままある。

 倉敷に帰って店の名前を憶えるのに苦労している。とくにやっかいなのが、電器店の「デオデオ」と薬局の「ジグザグ」と、レンタルDVDの「ゲオ」。この3つはランドマークとして挙げられることが多いので、しょっちゅう耳にする。でも、いざ使おうと思うと名前自体に意味がないからかつい混同してしまう。「あそこのデオデオの先を右に行って……あれ、デオだっけ? ん、ゲオゲオ?」みたいなことがこれまたままあるのだ。

 事態はさらに深刻さの度合いを増している。約束ごとをうっかり忘れてしまうことがあるのだ。つい先日もありえないポカをやってしまったばかり。
「ちょっとオレ、最近ヤバいね」
 中学校の同級生のミエちゃんとの会話で。
「ちゃんとスケジュール帳を見るようにしたら?」
「いや、見るようにしてるんだけど、過信してるんだよな。見なくても憶えてるって」
「携帯電話で約束するとよくないんだよね。すぐに書き込めかったりするから」
「なるほど……それいいね、言い訳に使えるかな」
「使えるわけないでしょ!」
 日めくりを買おうがホワイトボードを買おうが、書き込んだうえにチェックする習慣をつけないと意味がない。だったら、今のように手帳に書き込む手法でも同じはず───やろう、地道に。もう過信しないことだ。思い込むのだ。オイラはバカです、四十を過ぎてバカになりました……。