新・不定点観測

赤星豊

vol.25 宝の箱

025.jpg 今日は年に春と秋の2回開かれる「繊維祭」があった。児島の繊維関連メイカーやショップが出店し、商品を格安で、さらに在庫やサンプルは破格で売りまくるというお祭りである。毎年春と秋の2回開かれるこのお祭り、年々規模がデカくなって(出店ブースは繊維関係で約180、飲食で約30)、いまや人の集まり方がハンパでない。県外からわざわざやってくる人もたくさんいて、会場となる児島競艇場の広大な駐車場が、日曜日の渋谷の駅前の交差点の人出をそのままごそっともってきたような光景となる。
 児島競艇場に隣接したKJ編集室。当然ながら、この日は落ち着かない。目の前の駐車場は車と人がひっきりなしに往来していて、スピーカーからは民謡音楽が。たまに迷子のアナウンスも流れてくる。1階のカフェWombも大忙しだ。どんな音だったか忘れかけてた来客を知らせる入り口のドアの鐘が、今日は壊れた自動ドアに取り付けられたかのように始終カランカラン鳴ってる。

 繊維祭が誕生したのは、ぼくが小学校6年生のときだったと記憶している。それ以前にも、実は似たような町のイベントがあった。一カ所に出店形式で集まるのでなく、普段は小売をしないいくつかの繊維関連の工場がその日だけ一般の来客を迎え、B品と呼ばれるキズものの製品を破格で販売するのだ(デニムもトップスも100円玉で買えました)。もの心ついた頃からお洒落にうるさかったぼくにとって、このお祭りはアイテムを増やす格好の機会だった。「あの工場がやってるらしい」という情報をキャッチすると、自転車を必死でこいでかけつけ、工場に着くやいなや「おばちゃん、どこにあるん?」と息を切らしながら売り場を聞き、教えてもらったその場所でぐちゃぐちゃに服がつまったダンボール箱をあさる───これが実に楽しかった。うす汚れたダンボールの箱が宝箱に見えた。ちなみに、以前、「不定点観測」で紹介した「Lee」のホワイトジーンズ。実は「Dee」なんていうとんでもないパチもんだったんだけど、あれを見つけたのもたしかこの工場巡りでだったように思う。

 あの当時のワクワク感は、残念ながらいまの繊維祭にはない。今もかわらず服は好きだし、品物がぐちゃぐちゃになってるのも同じなのに、そこが宝箱のようには見えないのだ。そういうのって他にもたくさんある。子供の頃、あんなにワクワクしたのに今はなんとも感じないというやつ。たとえば映画館だ。子供の頃、映画館の前を通るだけでワクワクした。通りにある予告のポスターを見るだけでもたまらなく嬉しかった。店頭の商品ケースにスパゲティとかステーキを飾っているレストランの前を通るときもそうだった。今も映画は大好きだし、スパゲティもステーキも大好きだ。なのになぜだろうね。お金があるからだろうか(いや、今も買えない・食べれないというのは今も多いんだけど)。知ることで想像力が働かなくなったからだろうか。いずれにしても、あのワクワクした感じは尊い。できればいろんな場面で感じていたい。あの宝箱はいずこへ……。