月の明るい夜は海に行かずにいられない。編集室を出て、だだっぴろい競艇場の駐車場を抜け、堤防までを歩く。月のない夜なら懐中電灯がないとおぼつかない道のりも、今晩のような、自分の影がくっきり見えるほどの月夜ならなんなくたどりつける。堤防から海を眺める。島々のカタチはくっきりとして、海の向こう、高松の街の灯りがゆらゆらと揺れて見える。堤防にもたれて反対側を見る。山の稜線がシルエットになって、月の灯りに照らされた児島の光景は、まるでアンセル・アダムスの写真のようだ。風と波の音、それに秋の虫の声がその光景にかぶさる。照れることなく言える。美しい───。本当に涙が出るぐらいに。