新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.16 倉敷(1)

016.jpg ぼくの倉敷の郷里・児島は海と山に囲まれている。子供にとっては最高の環境といっていい。海も山もこれ以上ない遊び場になるからだ。世代が違ってもだいたい同じような遊びをしているので、子供の頃の遊びの話題になると話に結構な花が咲く。昨晩もこの手の話でおおいに盛り上がった。場所は児島のカフェWomb。スプートニクの香川さん、Wombの西原クン、創刊号の「krash people」に参加してくれた「Flag Staff」の小田クン、それにぼくの4人。
「海でカニ釣ってました?」
「釣った、釣った! ひもの先にサンマの頭つけてな」
「ソリ作った?」
「山の斜面でガンガン行きょったで!」
 と、こんな具合に盛り上がりは最高潮に達していた。そしてその話の流れに乗って、小田クンが言った。
「バッタ食べてましたよね?」
 ほかの3人のそれまでの子供のような笑顔が、笑顔のまま一瞬ゆがんだ。
「………バッタ?」
「ええ、バッタ。食べませんでした?」
「お、小田クン、バッタ食べとったん???」
 小田クン、保育園の頃、食べるどころかバッタが好物だったそうだ。彼が通っていた保育園では園児が遊びの時間になると競ってバッタをつかまえ、その場でパクリと食べていたという。「殿様バッタを食べてたヤツもいましたよ。さすがに大きくてぼくは食べれませんでしたけどね、気持ち悪くて」と、シラっとした顔で言う。バッタで十分気持ち悪いわ、とみんなが思ってたし口にもした。念のために言っておくが、児島の子供がみんなバッタを食べてるなんて間違っても思わないでもらいたい。
その夜は大の大人が朝の4時まで、ダラダラとたわいもない話をした。たわいもないだけに、今朝にはバッタの踊り食いのことしか頭に残っていなかった。

 10月30日、日曜日。今日は朝から岡山市内で開催されている「金属展」なる展示を見に行った。文字通り、金属を素材にしたアート作品やジュエリーを集めたエキシビションで、前から小田クンに熱心に誘われていた。前夜、ほとんど寝てないのと、車で連れて行ってくれるのがあの小田クンとあって、道中ずっと頭の中をバッタがピョンピョンはねていた。
彼が熱心に誘ってくれるだけのことはあった。参加しているのはほとんどが岡山在住の20人ほどのアーティストで、それぞれまったく違う個性を発揮している。金属というマテリアルの可能性を存分に見せてくれる展示だった(いや、ホントに)。
帰りに国道沿いのセルフうどんのお店でうどんを食べた。ぼくはごく普通のかきあげうどん。小田クンは、その店の名物らしき「ゲソ天うどん」を食べた。このゲソが悪魔的に巨大で、しかも足が多い。うどんの上にのせると、写真のように、はっきり言ってグロである。その足にうれしげにかぶりつく小田クンを見て、「この男、絶対、殿様バッタ食べとったな」と確信したのだった。倉敷の滞在日数2日間。