本当は東京に来たくなかった。来たらまた悲しくなる。別れをもう一回味わうはめになる。
昨日は夜に中島製麺所でつけ麺のマル得セットを、今日の昼はキッチンパンチでチキンライスのメンチカツのっけを食べた。ともになん回食べたかわからないような中目黒のいきつけのお店で、「これが本当に最後」という思いで涙しながら、味わい、味わい食べた。
今回の滞在は木曜日まで。木曜日の午後には引っ越しの業者が来て、ここ中目黒の事務所にある家具や荷物をすべて倉敷に運んでもらうことになっている。その後東京に来る予定はない。本当にこれで東京とお別れだ。残すところ3日。さて、今晩は何を食べよう?
夕方、銀行の帰りにウラくんの美容室に行った。お客さんがいたから、まったく相手にされなかった。事務所への帰り道、商店街を歩いているとむしょうに悲しくなった。あまりに悲しくなったからか、唐突に、デュラン・デュランとか、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドとか、ワムとかカジャ・グーグーが聴きたくなってブックオフに寄った。案の定なかった。ブックオフというのは、ぼくにとっては、どうにもかゆいところに手が届かない品揃えなのである。まあ、あったとしても、ワムとカジャ・グーグーは買わなかっただろうけど。結局、レディオヘッドのライブアルバムを1枚だけ買って帰途についた。
それでもまだ帰る気分になれなかったので、途中、パチンコ店の自動扉をくぐった。たぶん5年ぶりぐらいだ。数あるギャンブルのなかで、ぼくはパチンコほどくだらないものはないと思っている。そう思うにいたるまで、20年近くかかったわけなのだが。
とくに台を選んだわけではなく、座りやすかったので角の台に座った。数字が3つ揃うタイプの典型的なパチンコ台だ。ただ不可解な点がひとつ。球がたまる場所の縁に「PUSH」と書かれたわりと大きめのボタンがある。なんのために使うのか、さっぱりわからない。打ち始めてすぐに、隣に座っていたオジサンがいきなり狂ったようにそのボタンを「タタタタタ!」と押した。そのとたん、隣の台でリーチがかかった。そのリーチははずれてしまった。オジサンは何ごとも見なかったようにまた平然と打っている。わけがわからん。
そうしているうちに、またオジサンが同じように、いきなり画面に顔をくっつけるようにして「タタタタタタ!」。それで当たりがきたわけでもリーチがかかったわけでもなかった。でも、こりゃあこのボタンが何か重要な役割を担ってるに違いない。かといって、どのタイミングで押していいかさっぱりつかめない。とんちんかんな使い方をしているのを見られたくないので、ぼくは何気なくボタンのある場所に手をおいて、人差し指だけでこっそりボタンを「タタタタタ」と押してみた。なんの変化もなし。リーチがかかったときにも押してみたがどうにも効果があるように思えない。お手上げだ。打ってても全然楽しくないので、台を変わろうしたそのとき、画面の左下に「PUSH!」とサインが出た。なんだ、そうだったのか。思わず手を伸ばして、今度は堂々と「タタタタタ!」。リーチがきた。否がおうにも期待はつのる。でも、はずれた。スーパーリーチに発展することもなく。
結局3000円も打って、意味がつかめないままパチンコ店を出た。ものすごく消化不良な感じだ。なんなんだこの気持ち悪さは。だからパチンコなんてやんない方がいいんだって。おいらの、バカ……。