新・不定点観測

赤星豊

不定点観測:vol.100 倉敷(10)

100.jpg 記念すべき100回目である。記念すべき100回目であるからして、なにか劇的なことを話題にしたいと思って息をひそめて待っていた。が、そんな劇的なことが都合よく起こるわけもなく、のばしのばしにしているうちに1週間が経ち、「もうなんでもええじゃろ」となかば諦めを抱いたままこの回を書きはじめた。
 オカンの調子が少しよくなっているような気がする。2週間ほど前に、病院から処方されている睡眠薬を飲むのをやめたのが功をそうしたのかもしれない。1階のWombのマキちゃんが、以前におばあちゃんがボケしてしまったとき、睡眠薬を飲むのをやめたらボケが治ったという話を聞いたのだ。ただやめたわけじゃない。本人は「睡眠薬によってよく眠れている」という暗示にかかっている可能性があるので、「はい、これ今晩の睡眠薬よ」と言ってただのカルシウムの錠剤を飲ませたという。これとまったく同じことをやってみた。近所の薬局で睡眠薬の錠剤と似ているサプリメントを探してオカンに飲ませてみた。すると、「あれ、今日のは粒が大きいなあ」とオカン。そう、色は同じなんだけど、サイズが若干大きかったのだ。さすがはうちのオカン、ボケているようで観察眼はベテランの刑事なみである。「そんなことないで、ホレ、飲みんさい」。オトンが水を差し出すと、納得しかねる表情で錠剤を飲み下した。これを2週間つづけてみたところ、以前から頻繁に口にしていた「あそこに誰がおるん?」のようなシックスセンス的言動が減った。顔の表情もどことなく生気が戻ってきているような気がする。よくなれるんだったら、やっぱり少しでもよくなってほしいね。ほとんど諦めてたけど、オカンはもしかしたらよくなるかもしれない。今まではちょっと消極的すぎた。これからは積極的にやるよ。というわけで、この「睡眠薬→カルシウムすりかえ大作戦」、もうしばらくつづけてみるので、結果は順次報告したいと思う。

 7月20日、木曜日。あれ、20日というのにまだ倉敷にいる。去年は今ごろ東京でレイアウト作業の真っ只中にいた。やばい、どうなるvol.3 ? ホントに8月末発行(東京)に間に合うんだろうか。たぶん、ギリだ。こうなればぼくの座右の銘、「たいがいのことはなせばなる、ならないときは仕方ないよね」の精神で行こう。
 唐突だけど、昨晩、岡山のユルスタに行って飲んだ「フルーツトマトとヨーグルトのシェイク」は抜群に美味かった。一緒に食べたスコーンもこれまたうまいときた。それにふと本棚を見ると、最近とくに気になってるウォルフガング・ティルマンスの写真集がある。バックに流れるのはぼくの大好きなデヴィッド・シルヴィアンの曲(高木正勝のセレクトした曲を集めたアルバムらしい)。岡山での仕事の終わりに最高の時間を過ごさせてもらいました。

 今日も一日ひどい雨だった。おかげで1階のWombも昼間は来客がほとんどなし。あまりに静かだったんで、2階からギターをもって降りて、宇治ミルクのカキ氷を食べながら景気づけにギターを弾きまくった。こうして、いかにも優雅な時間を過ごしてるような錯覚を与えて、記念すべき100回目は終わろうとしている。ホント、こんなことしてる場合じゃないんだけどね。さすがにもう仕事しようよ。倉敷の滞在日数、50日を超えたかも。(写真は編集室に最近やってきた革張りのチェア。リクライニングになるからよく眠れるんだ、これが)