Vol.47でこう書き出した。「大学1年生で人生最大の失恋をした」。この人生最大の失恋の相手は今も倉敷に住んでいる。しかも、ぼくの実家のある児島に。
彼女とは中学2年の終わりあたりから付き合い始めた。いわゆる初恋の相手だ。同じクラスになったことはなく、一度も話したこともないのに、無謀にも彼女の家に電話してデートを申し込んだ。ちなみに初デートはボーリングだった。
中学3年になると映画を見に行ったり、互いの家に遊びに行くようになった。彼女は女子高に進学し、付き合いは自然消滅していった。でも、高校3年の夏に復活。しかし蜜月の時期は短く、大学1年生で派手に撃沈したというわけだ。しかし、実はその後も23歳ぐらいまで彼女とは会っていた。何度撃墜されようがめげなかったみたいだ。ずっと彼女のことが好きだった。我ながら一途な性格だ。
会わなくなって18年あまり。その間、彼女とは一度も連絡を取り合っていない。さすがに彼女への思いは思い出に変わってる。だから、風の便りに彼女が現在も独身でいると聞いても、心が揺れることもなかった。まさか自分から連絡をとるなんて夢にも思ってもなかった。そう、ぼくは彼女に電話した。Vol.47を書いた4日後のことだ。
ふと「電話してみよう」と思い立ってすぐだ。家の電話帳で電話番号を調べ、そのまま躊躇することなくダイヤルした。お母さんが出た。懐かしかった。お母さんもとても懐かしがってくれた。10分ぐらい話しただろうか。「いい加減、代わってくれないかな」と思っていたら、「今、仕事で岡山に行ってる」と言われた。その後もしばらく話して、切る前にぼくの携帯の番号を伝えた。その夜は電話がなかった。もうかかってこないと思っていたら、翌朝、メールが来てた。アドレスなんて伝えてないのにだ。文面はだいたいこんな感じだった。
神戸にいる彼女のお姉さんが、ぼくの記事が掲載された読売新聞をこのお正月にもって帰った。それを見て、ぼくが倉敷にときどき帰ってることや雑誌を作っていることを知った。HPにメールアドレスを見つけて連絡をとってみようとも思ったが、初めて読んだぼくのコラムがvol.47。「人生最大の失恋で不眠症になった」というやつ。到底、自分からは連絡できないと思ってた矢先にぼくからの電話があった、云々。
最後に「あさって会いませんか?」とあった。やっぱり嬉しかったね。すぐに「じゃあ夕方から会おう」と返し、日曜日の午後4時にカフェ「Womb」で待ち合わせた。
自分では落ち着いてるつもりだったけど、やっぱりどこかそわそわしてたんじゃないかと思う。テーブルで待っているのが居心地悪く、レジのところで立って外を見ながら待ってた。待つこと10分ぐらい、彼女の車が駐車場に入ってくるのが見えた。すぐにテーブルについて落ち着いてる様子をつくろう。でも、やっぱり立ち上がって、玄関の外まで出て彼女を迎えた。「どこか」どころか、メチャクチャそわそわしてたんかもしれない。
黒いタートルのセーターにジーンズというシンプルなコーディネートで現れた彼女。18年たってもほとんど変わってなかった。しいて言うと、顔が少しだけ丸くなって、ほくろが増えてた。でも、笑顔は変わらずキュートだ。ジーンズは2サイズぐらい上かもしれない。でも、昔がスリムだったから、これで普通の人ぐらいだ。久しぶりとか、元気とか、そんなどうでもいいあいさつを交わし、テーブルについた。テーブルについて、最初にぼくの口からついて出たのは、こんな質問だった。
「あの頃から何キロぐらい太っとるん?」
我ながら、なんちゅうことを聞くんじゃ、と思ったが、彼女はそれで気を悪くするほどヤワじゃない。むしろ嬉しそうな顔でぼくにこう言った。
「相変わらずじゃなあ、そういうことをズケズケ聞くんよな」
こうして初恋の相手との18年ぶりのデートが始まった。