新・不定点観測

赤星豊

vol.471 グロテスカリ

DM0728.jpg 唐突ですが、本日7月28日(水)から8月2日(月)まで、玉野市の宇野港すぐそばにある駅東創庫内のギャラリー「Gallery Minato」にて、私、の今年3度めとなる写真展『GROTESQUERY(グロテスカリ)』を開催してます。前回、児島のD_MALLで展示した作品を3点ばかり展示してますが、基本的には新しく撮り下ろした写真で構成してます。みなさん、是非足を運んでやってください。31日(土)は午後7時からオープニングパーティのようなものもやります。このパーティで、駅東創庫をアトリエに活動しているShigeru氏とのアーティストトークも予定してます。もちろん参加は無料。ぼくの坊主頭をひと目見たいという方、絶好の機会です!

 

vol.470 海老蔵

 長いこと空けてしまった。このコラム、連載開始以来、こんなに書かなかったこともなかったと思う。従妹のひとりからはおしかりに近いメールまでいただいた。あんた、書きなさいよ、と。なにをやっているのよ、と。言い訳するわけじゃないけど、これまで何度か書こうとしたのだ。実際、書き上げてアップ寸前まで行ったこともある。でも、読み返してみて、はたしてこれは面白いのかと。こんな駄文を公にして意味があるのかと。そんな気持ちの悪さとともにゴミ箱へポイ。それでも要望に応えたいという気持ちは少なからずあるので、そのあたりの思いをくんでいただきたく、今回は写真で勝負することにした。ぼくを知ってる人にはそれなりのインパクトがあるんじゃないか。でも、ぼくを知らない人には、赤星さんってこんな容貌の人なのね、で終わるかもしれない。まあそれでも全然いいんだけどね。これからしばらく、こんな容貌でいきますので。「児島の海老蔵」と呼んでくれて結構です。

vol.469 幼稚な世界

 あそこまで厳しく処罰する必要があるのか。こたびの日本相撲協会による琴光喜の解雇処分。実質、角界からの永久追放である。せめて1年間の謹慎処分にするとか、それぐらいの慈悲があってもいいんじゃないか。相撲しか知らない男の今後を思うといたたまれない。まったく希望が見えない。「当然」とか「それも仕方ない」とか世論は冷たい。メディアにいたっては裁判官きどりだ。「除名にしなかったのは甘い」(共同通信編集委員・山陽新聞から)なんて言うあんたはいったい何様だ?


 どこかの女性記者が責めるような口調で白鳳に聞いていた。「なぜギャンブルをするんですか?」。新聞だかテレビだか知らんが、あんなアホを記者にする日本のメディアは程度がしれてる。断言しよう。ぼくがもしも角界にいたら絶対やってた。野球賭博はやったことがないからよくわからんけど、花札とか麻雀の類いは積極的に参加していた。名前を公表される? よござんすよ。でも、メディアの前で頭を下げろと言われたら、断固お断りさせてもらう。
 

 ついでに言っておくと、朝青龍の引退の件も気に入らない。暴力沙汰はよくはないけど、世間やメディアがまるで被害者のように吊るし上げた。あのとき朝青龍がメディアに、メディアの向こうにいる世間に迷惑をかけたか?


 すごく冷めているくせに、他人の過ちには手厳しい。寛容さのかけらもない。そんなメディアや世間の論調(2ちゃんねるとかが影響力をもっていることもほとほと情けない)におもねって、公人を抱える事務所や団体はびくびくしている。実に未成熟で幼稚な、つまらない世の中になってしまった。そうは思わんか、黒住よ?

vol.468 閉店つづき

 児島のステーキ店「レッドウッド」が6月で閉店することになった。30年近く営業を続けてきたそうだ。なにせものがステーキなので、頻繁に行ってたわけじゃないけど、たまに行ってた。KJのvol.10では店主の森山さんにも登場いただいた。いい店だっただけに残念。
 この春には下の町のうどん店「あやがわ」も閉店した。「レストランみその」も閉店した。こうしてたまに行っていた店が閉まると、ちょっともの悲しい気持ちになる。親友じゃないけど、たまにご飯を食べたりする友人が海外に移住してしまうような、そんな類いの悲しさ。それと、もちろん舌に親しんだ料理が食べられないという寂しさも。


 これは地方に限ったことじゃない。東京でも閉店の寂しさを経験した。いちばん思い出深いのは、中目黒の商店街にあったカレー店「オレンジツリー」。あそこのカレーはぼくの人生で最高の逸品だった。注文してから料理が出て来るまでに1時間半以上もかかるシステムにも驚いたが、あのカレーの味は生涯忘れられない。あの店が突然閉まっていたときには、絶望にも似た悲しさを感じた。もう一軒は中目黒の山手通り沿いにあった定食屋(名前が出てこない……)。テーブルの上にあるマリモを入れた鉢がなんとも不潔そうで、一緒に行くのを嫌がる友人もいたけど、あそこのマグロ定食は安くて実にうまかった。近所の美容院のウラくんとよく一緒に行ったっけ。こうした名店がなくなったことを思うと、いまも少なからず寂しさがよみがえる。


 捨てる神あれば拾う神あり。児島にもついに「ブックオフ」ができた(冒頭の例えが違いますか?)。ここの「ブックオフ」は中目黒にあったそれとはちょっと違う。本やCDのほかに、古着や電家製品、おまけにギターまで置いてある。「ブックオフ」でギターなんてと思うかもしれないけど、なんとそこにマーチンのアコギが売ってたりするのである。4800円のギターの横に、普通に28万円が。この無造作な感じは嫌いじゃない。むしろウェルカムである。
 この日曜日にCDを2枚買った。「フーファイターズ」、950円。もう一枚は、山下達郎のよくわからないアルバム。たまたま店内で山下達郎がかかっていて衝動買いした。これ以上ないほどの衝動買いではあったが、事務所でかけていてもこれが不思議とそりが合う。さすがにヒトミちゃんには不評かと思いきや、「わりといいですね」。というわけで、ここ3日間、アジアンビ―ハイブに来たお客さんたちは、「ブックオフ」のせいで、打ち合わせのBGMとして山下達郎の『高気圧ガール』なぞを聴かされているのであった。

vol.467 営業デー

「よし、ちょっと歩こうか」
 本日午前10時。突然の思いつきを口にしたようだけど、実はそうじゃない。東京に滞在しているときから思っていた。こっち(倉敷)は完全に車社会、ほとんどといっていいほど歩かない。東京人の5分の1ほど、今回の滞在で痛感した。ヒトミちゃんに体力をつけてほしいというのもあって、就業中でも、時間があれば歩こうと心に決めていたのである。
「デザイナーもイラストレーターも、最後は体力勝負だ」
 いや、そうともいえないと思ったけど、口にしたものは戻らない。ヒトミちゃんは突然のトップダウンのミッションに、あたふたしながら、それでも出かける用意をしていた。
「競艇場の先まで歩くぞ」
 腕をちゃんと振って、一歩一歩、しっかりと歩く。競艇場の先まで約600メートル。そこから折り返して事務所まで約20分のウォーキング。事務所に帰り着くと、背中がびっしょり汗で濡れていた。慌てて事務所にある2台のクーラーをフル稼働させた。
「あああ、暑い!」
「暑いです!」
「やっぱ、夏の昼ってのは無理があるな、暑ッ!」
「そうですねえ、暑すぎます」
 言いながらヒトミちゃんは長い髪の毛を片手で後ろでまとめ、首の後ろをもう一方の手でパンパンたたいていた。うん、やろうという季節を完全に間違えた。アジアンビ―ハイブの体力強化プロジェクトはこうして一度のウォーキングで終了した。


 汗がひいたところで、コーヒーを飲みながらふと思いついた。
「ちょっと営業でもしてみようかな」
 これまで向こうからやって来る依頼だけでなんとか食いつないできたけど、思えば運がよかっただけのような気がする。実際、この7〜8月は仕事らしい仕事がなく、予想の収入額が予想支出額をかなり下回っている。そんなことは前からわかっていたのだが、営業という選択肢をまったく思いつかなかったのだった。
「アジアンビ―ハイブの営業プロジェクト、リーダーはヒトミちゃんね」
「ええええっ! 営業したことないです!」
「プロジェクト名は『#03(シャープ・ゼロサン)』でいこう」
「なんで『3』なんですか?」
「んなことはどうだっていいんだよ。まずはリストアップだ。倉敷・岡山の企業で、ダサいホームページを作ってる会社をリストアップしよう。そんなところは会社案内とかも絶対ダサいから、『こんなの作れますよ」って提案するんだよ。ほら、あそこなんか、絶対ダサいのやってるはずだよ」
 そう言いながら、早速、ホームページをチェックする。ぼくとヒトミちゃんが無言でマックのモニターを注視する。現れたトップページ。
「げっ!」
 ものすごく洗練されていた。
「……心当たりがある会社がひとつあるから、ちょっと電話でもしてみようかな」
 そこは3年間ほど連絡を怠っていた倉敷の某メーカー。
「というわけで、またお時間があるときにお邪魔させていただきたいと思いまして」
 電話の相手は専務のHさん。話すのは実に3年ぶり。いや、4年ぶり?
「今日?」
「いや、今日というわけじゃなくって、一カ月先でも二カ月先でも」
「今日なら午後は空いてるんだけどね」
 電話を切った。
「ヒトミちゃん」
「はい」
「今日の2時に営業に行くことになった」
 それから慌てて先方に見せる営業材料を作ることになった。ベティスミス、富士ヨット学生服などなど広告のデータをプリントアウトし、さらにはDMやショップカードなどを紙に貼り付けクリアファイルにファイリングしていく。


 くだんの某メーカーの駐車場。営業材料を携え、車を降り立った。ヒトミちゃんに営業のなんたるかを見せなきゃいけない………不安だ。
「あのさ、オレ、営業って苦手なんだよね」
「そうなんですか?」
「うん、切り上げるのが早いんだ。いつだったか、福山の北川さんに怒られたこともある。『これからってときに、なんで帰ろうとするのよ!』って」
 何年かぶりというのに、その会社はレイアウトもまったく変わっていない。専務のHさんも同じ席に座っていた。
「いやあ、お久しぶりです」
 Hさんを前にして、KJが10号で完結したこと。これから広告制作でやっていくことなどを早口でまくしたてた。
「じゃあ、なにかあればいつでも提案してください」
 H専務、かなりお堅い感じなんだけど、相変わらずいい人だった。
「わかりました。では、積極的に提案させてもらいます」
 そう言ってぼくは席を立った。具体的に仕事につながる話は一切なし。営業時間、約15分(10分だったかも)。「積極的に」と言っておきながら、および腰の、はなはだ消極的な営業であった。
 アジアンビ―ハイブの営業活動はまだ始まったばかり。しかし、ぼくの営業が仕事につながるとは到底思えない。それでも、このプロジェクトは体力強化プロジェクトのウォーキングとはわけが違う。これから地道に努力していこう。もちろん、最初に任命した通り、プロジェクトリーダーはヒトミちゃんだ(丸投げしてるわけじゃないです)。彼女がひとりで営業に出かけるなんて日もそう遠い話じゃない。頑張れ、ヒトミ!